サイエンス

2025.01.20 18:30

船の座礁を機に絶滅した「世界最大の飛べないナナフシ」、20km離れた島で発見

飛べないにも関わらず20km離れた海食柱で再発見されたロードハウナナフシ(Getty Images)

ボールズ・ピラミッドで生き延びたロードハウナナフシは、クマネズミといった捕食者の不在と、過酷で隔絶された環境のおかげで生息地が人為的撹乱を受けなかったことからも恩恵を得た。しかし、集団の存続が危ういことは明らかだった。干ばつ、嵐、外来植物といった環境撹乱が、彼らの脆弱な生息地に影を落としていた。

ロードハウナナフシの完全復活へ

ロードハウナナフシの再発見は世界の注目を集め、即座に保全の取り組みがスタートした。2003年、愛情を込めてアダムとイブと名づけられた2個体が、メルボルン動物園に送られた。飼育下繁殖の取り組みは、当初は課題が山積していたが、忍耐の末に成果を上げた。
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現在では、飼育下繁殖の成功によりロードハウナナフシの個体数は数千個体まで増え、メルボルン動物園だけでなく、米国のサンディエゴ動物園、英国のブリストル動物園など、世界各地の飼育施設で見ることができる。新世代のツリーロブスターたちはみな、この種が備える強靭さと、彼らの生存のために尽力してきた保全チームの献身性を、身をもって証明する存在だ。

2019年、ロードハウ島齧歯類撲滅プロジェクトと呼ばれる徹底的なイニシアチブが発足した。賛否両論を巻き起こしたこのプロジェクトでは、殺鼠剤の空中および地上散布により、外来齧歯類の個体群を全滅させる目標が掲げられた。

計画は、殺鼠剤による環境影響を心配する一部住民の反発を受けた。しかし、保全チームは粘り強い取り組みを進めつつ、島の生物多様性の回復には齧歯類撲滅が不可欠であることを訴え続けた。
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プロジェクトは成功を収め、2019年末、ロードハウ島のクマネズミとハツカネズミは根絶が宣言された。この画期的成果により、ロードハウナナフシを古くからの故郷に再導入する準備が整った。

現在、ロードハウナナフシの再導入計画が慎重に進められている。脆弱な個体群に対して、かつて彼らを絶滅の瀬戸際まで追い詰めた外来捕食者のいない生息環境を提供し、繁栄を取り戻すチャンスを与える努力が続いているのだ。

ロードハウナナフシを紹介するオーストラリア・メルボルン動物園のスタッフ(Danny Ye / Shutterstock.com)

ロードハウナナフシを紹介するオーストラリア・メルボルン動物園のスタッフ(Danny Ye / Shutterstock.com)

forbes.com 原文

翻訳=的場知之/ガリレオ

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