イノベーションスコアカード:日本の強みと課題
会期初日の基調講演で、CES主催のCTA(Consumer Technology Association)は「2025 Global Innovation Scorecard」を発表した。この評価は、74カ国のイノベーション浸透度をテクノロジー、グリーン、ダイバーシティー、税制などの16指標で独自に分析したものである。日本は、25カ国のみが選ばれる「イノベーションチャンピオン」に名を連ねた。まず、ブロードバンドの普及に関しては最高評価の「A+」を獲得。さらに、研究開発(R&D)への投資も「A-」と評価された。スタートアップ支援においても、2023年の「C」評価から「B」へと改善している。加えて、法的制度がイノベーションを支援する形で設計されていることや、自動運転車やブロックチェーンなど次世代技術を積極的に受け入れる姿勢も高く評価された。
一方、多様性(Actual Diversity)に関する移民受け入れやジェンダー平等の項目では「D-」、税制優遇(Tax Friendly)は「D」、スキルある労働力への投資(Invests in Skilled Workforce)も「C」という低評価となっている。ICT教育やSTEM教育の普及が十分ではないことらしい。調査を実施したCTAは、この結果が一方的な視点に基づくものであることを認めている。しかし、これを機会に、日本が世界からどのように評価されているのかを客観的に捉える指標として参考にすることもできるだろう。

AIホームの未来
CES 2025で大きな注目を集めたテーマの一つが、AIホームである。SamsungとLGがそれぞれ独自の戦略を発表し、未来の家庭像を提示した。Samsungは家電間がAIにより「エネルギー・時間・地球資源の節約」を実現すると語り、LGもLG AI 「FURON」が自律的に家電連携する新しい生活スタイルを提案した。
さらに、パナソニックも独自の方向性を示した。基調講演の壇上で楠見雄規社長は新たなビジネスイニシアチブ「Panasonic Go」を発表し、2035年までに売上の30%をAI関連事業で達成するという戦略を掲げた。その中核を成すのが「Panasonic Well」である。このプラットフォームの中心に位置する「UMI」という新サービスは、家族間のAIを介したコミュニケーションを円滑にするソリューションであり、“サンドイッチ世代”を主なターゲットとしている。この世代は親の介護や子育てといった両方の責任を担うことが多いが、UMIを活用することで、家族のケアと自身の時間を両立することが可能となる。UMIの技術的な基盤には、倫理を重視したAI開発で知られる米スタートアップAnthropicの対話型AIが採用されている。これにより、家族のプライバシーを守りつつ、円滑なコミュニケーションを実現する。
家庭内でのAI活用が進む一方で、セキュリティやプライバシーの課題にも対応していく必要性が増す。SamsungやLGは昨年よりもセキュリティの重要性を強調していた。