カルシウムは特に成長期の子どもの骨と歯の形成に欠かせない栄養素として知られているが、この新たな研究結果が示しているのは、カルシウムの豊富な食品をとることによる大腸がんの予防効果だ。
がん研究を支援する団体Cancer Research U.K.(英国王立がん研究基金)が資金を提供した同研究では、女性50万人以上の約16年間にわたるデータを使用(うち1万2251人が研究期間中に大腸がんに罹患)。研究者が全員の食生活を分析したところ、カルシウムが豊富な食事をとっている人の大腸がん罹患率は、そうでない人に比べて著しく低い傾向があることがわかった。
英オックスフォード大学の上級栄養疫学者であり、本研究の主任研究者ケレン・パピエーは広報資料で次のように述べている。「これは食生活と大腸がんの関連性に着目した最大規模の研究であり、特に大腸がんを予防するカルシウムの有用性を明らかにしています」
研究結果によると、毎日300mgのカルシウムを摂取すると、大腸がんの罹患リスクが17%低下するという。これはコップ1杯の牛乳に含まれる量とほぼ同じだ。カルシウムが豊富な食品といえば牛乳の他にもヨーグルトやチーズがあるが、緑黄色野菜、そして豆乳などの植物性ミルク(カルシウムが加えられていることも多い)にも含まれる。
「カルシウムが体内でどのような働きをして大腸がんを予防するかは、ある程度解明されています」とパピエーは言う。「カルシウムは体内で胆汁酸や遊離脂肪酸と結合し、無害な化合物を形成して腸の内壁を傷から守ります。これが大腸がん予防につながっていると考えられています」
逆に、大腸がんの発症リスクを高める食品もある。よく知られているのは、赤身肉、特にハムやソーセージなどの加工肉だ。昨年行われた、大腸がん患者3万人以上のデータを用いた研究では、赤身肉を大量に食べることにより、大腸がんの発症リスクが最大40%高まる可能性が示されている。
特定の栄養素と病気の関連性に関する研究では、万人にあてはまる答えを出すのは難しい。しかし今回のカルシウムに関する知見は50万人ものデータを基に導き出されていることから、信頼性が高いと言える。
同研究は平均年齢60歳の女性を対象に行われたが、研究者らはカルシウム摂取の恩恵は男性や若年層にもあると考えている。大腸がんは今、懸念が高まる若年層の罹患を含め、世界的に増加している。しかしその原因はまだわかっていない。早期に発見して治療すれば完治の可能性も高くなるため、45歳を過ぎたら定期的な大腸がん検診を受けることが推奨される。
(forbes.com 原文)