リーダーシップ

2025.01.15 11:00

「上司の削減」が進む米国、メンター不在の職場でZ世代を待つ危機

Giulio_Fornasar / Shutterstock

「管理職不在」の時代、Z世代の「仕事の未来」は板挟み的状況に

調査会社The Harris Poll(ザ・ハリス・ポール)の調査によると、管理職のうち、「Z世代の新入社員は、もっとソフトスキルに関してトレーニングを受ける必要がある」と考える者は全体の82%に達している。一方、Z世代の従業員では、管理職から強く求められているこうしたソフトスキルについて、研修などで教えられるものではなく、経験豊富な先輩の姿を手本にすることで徐々に身につけていくしかないと考えている者が8割近くに上る。こうした矛盾しあう現状認識の結果として、板挟み的な状況が生まれている。

これは典型的な「ニワトリが先か、卵が先か」というパラドックスだ。価値ある経験を得られる機会を奪われた状態、あるいは、こうした機会を共有してくれる上司の統括がない状態で、どうやって価値ある経験を得られるのだろうか?

上述したハリスの調査では、Z世代の従業員では、半数以上が「専門職に就くための準備が足りない」と感じていることが明らかになっている。その原因として彼らが挙げているのは、コロナ禍により、人格形成期にソフトスキルを習得する機会が失われたことだ。

自身が目にしたことも、学んだことも、実際に体験したこともないスキルを、どうやったら示すことができるだろうか? Z世代の従業員の半分以上が、対人関係のスキルを習得する機会が得られなかったために、「愚かに思われそうな質問を投げかける」ことが怖い、と回答している。

ハリスの調査では、Z世代の回答者の6割近くが、ソフトスキルに関して、誰に助けを求めたらいいのかわからない、としている。もしかするとそれは、上役にあたる管理職が最近になって解雇されたことが原因かもしれない。

Z世代へのガイダンスは、「上司による管理」から「コーチング」へ

LinkedIn(リンクトイン)の人材開発担当バイスプレジテントを務めるリンダ・ジンファン=カイは米フォーチュン誌に対し、ソフトスキルは「今後の職場では、仕事を円滑に進めるための『通貨』になる」と指摘した。ジンファン=カイによれば、共感や心理的つながりを重視しない者によって率いられる会社は今後、この不可欠な通貨が欠けているために敗北を喫するという。

2025年に入り、AIが事業運営にさらに深く統合されていくなかで、ソフトスキルの重要性はさらに増している。例えばそれは、総合的判断やチームワーク、ビジョンの明確化といったものだ(たとえ、そのビジョンが描くものが「AIの次のフェーズ」だったとしても)。

こうした状況では、コーチングを導入することで、未知の部分を補い、経験の習得を加速させ、「愚かに思われそうな質問」でも安心して投げかけられる場所を提供できる可能性がある。以下に、実務でコーチングが役立つ場面を3つ挙げよう。
次ページ > 実務でコーチングが役立つ3つの場面

翻訳=長谷 睦/ガリレオ

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