筆者は、米フォーブス誌に寄稿した別の記事で、ホワイトカラーの人員削減に関する過酷な現実について指摘した。グーグルやメタ、UPSなどの大企業では、中間管理職という役職そのものが根こそぎ廃止されつつある。実際、Live Data Technologies(ライブ・データ・テクノロジーズ)のリポートによると、2023年に実施されたレイオフのうち、中間管理職の占める割合は全体の3分の1を占めたという。
これは、ホワイトカラーの管理職のみならず、Z世代の働き手にとっても暗いニュースだ。Z世代の働き手たちは、上司に対して、ガイダンスやメンター的役割、監督を求めているからだ。管理職とはもはや、消え去りゆくキャリアなのだろうか?
「管理職不在」の職場でZ世代を待ち受ける課題
CNBCの報道によれば、米アマゾンは現在、個人貢献者(IC:Individual contributor、部下を持たずに専門的な業務に従事する一般社員やフリーランスを指す言葉)を中心とするモデルへと移行を進めている。これは、「上司の削減(unbossing)」と呼ばれる動きの一種であり、最大で1万4000人相当の管理職が廃止される可能性がある。他の企業も、これほど大規模ではないが同様の施策を実施している。つまり、最終的な収益を改善するために、中間管理職の削減に乗り出しているのだ。現実問題として、これにはどんな要因が絡んでいるのだろう? AI(人工知能)によって、中間管理職はもはや無用の長物と化しているのだろうか?
上述したCNBCの記事で、「上司の削減」トレンドについてコメントしたテキサス・クリスチャン大学ニーリー・スクール・オブ・ビジネスのジョセフ・ロー(Joseph Roh)教授によれば、「デジタルトランスフォーメーション(DX)は大きな役割を果たしている」という。「自動化や先進的なテクノロジーの導入により、タスクの進捗管理を担う中間管理職の必要性は下がっている。今では、進捗をソフトウェアでモニタリングできるからだ」
中間管理職が消えつつあるなかで、従業員のエンゲージメントは大幅に下がっている。Gallup(ギャラップ)のあるリポートは、従業員と管理職のあいだに育まれる強い心理的なつながりは、業績や従業員のウェルビーイングを高める原動力となっていると指摘し、「管理職の役割は、かつてないほどに重要度を増している」と主張している。だが、これは本当だろうか?
Z世代にとっての危機は、多数の中間管理職が職を失ったことではない。ここで重要なポイントは、中間管理職という職種自体がもはや実際には存在しないということだ。こうしたなかで、従業員のエンゲージメントが非常に下がっていることはまったく不思議ではない。米フォーブス誌の記事によれば、Z世代の働き手のうち、「中間管理職になりたくない」と考えている者は52%に上る。
Z世代に残された道は、セルフリーダーシップ(目標設定や優先順位の策定など、従来は上司の役割だった任務を自ら担う働き方)だろう。だが、他者からの導きなしに状況を進んでいくのは、本当に困難な道になる可能性もある。