「熱」を上げ、追いかけた先で掴んだチャンス
社内で異色のレーベルとして始動したBEAMS JAPAN。タイトなスケジュールの中、鈴木さんのアシスタントに選ばれたのが、太田友梨さんだ。
「私は2009年入社で、当時は店舗スタッフとして雑貨を担当していました。旧BEAMS JAPANの全館リニューアルに伴い、半年間程店舗を閉館することになって、『あなたは新プロジェクト立ち上げのお手伝いをしてください』と言われたんです。そこで修司さんに会いました。最初は不思議な方だなと……(笑)」(太田さん)
太田さんが最初に頼まれたのは、これから取り扱う商品の資料づくりだった。
「僕がいきなり山形県のけん玉や信楽焼の狸の話をしても、若いスタッフはわからない。『僕が喋ることを噛み砕いて資料にまとめて!』と太田さんに頼んだんです」(鈴木さん)
「一つひとつ話してもらったことを、メモに取って資料にしました。初めてする仕事で私はパニック状態でした」(太田さん)
商談などにも同席するようになった太田さん。鈴木さんの働きぶりには驚きの連続だった。
「修司さんのエネルギーはどこから出てくるんだろう……と思うほどすごかったです。商品からディスプレイ、売り方など、全部の仕事をされていたんです。修司さんを少しでも楽にさせてあげたいというか、私も役に立たなくちゃという使命感がありました」(太田さん)
「太田さんみたいな人が何人かいて助けてくれたんですよね。僕と佐野さん、死にそうな顔で仕事してたので(笑)」(鈴木さん)

朝から晩まで一緒に働く中、鈴木さんもとあることに気がついた。
「僕が信楽出張に行くとき、太田さんが自腹でついてきたんです。今どきこんな子がいるんだな、大したもんだと思いました」(鈴木さん)
「お話を聞いている内に、どうやって作っているのか見たくなってきて。旅行や食べ物も好きだったので『ついていっていいですか?』と(笑)」
先陣切って新しい世界に飛び込むファーストペンギンは、孤独にも陥りやすい。ファーストフォロワーのように、追いかけ、伴走してくれる人は得難い存在だ。
「せっかく出張について来てくれたので、僕が不得意なアクセサリーの商品企画を太田さんに任せてみたんです」(鈴木さん)
「そのときに企画した琵琶湖の淡水真珠の商品は、ロングセラーで今も販売しています。一番思い出に残っている仕事ですし、修司さんのアシスタントになって人生が変わりました」(太田さん)

先輩の背中を追った一歩は、太田さん自身の仕事の幅を広げるきっかけになった。
「店舗スタッフだった太田さんは、今ではBEAMS JAPANのディレクター。社内に20人ほどの責任重大なポジションになんですよ」(鈴木さん)