金沢21世紀美術館(21美)が昨年10月、開館20周年を迎えた。コロナや震災の影響もあるが、東京の国立美術館と並べ国内トップクラスの集客力を誇る。そうして街に訪れた人を拡散する役を担っているのが「KAMU kanazawa」。林田堅太郎が設立した私設美術館だ。2020年夏に開業後、着々とスペースを増やし、24年11月には8つの展示を展開する。目玉は、21美の代表作「スイミング・プール」と同じ作家レアンドロ・エルリッヒによる常設作品。「あの作家の大型展示をもうひとつ見られる」と回遊させる狙い通りに、インスタグラムには“レアンドロの階段”の写真が大量に投稿されている。
ほかにも、使われなくなった商業ビルの階段や屋上、人通りが少なくなった商店街や繁華街などに多種多様なアートを接続。日夜街を歩けば、KAMU来場者向けのマップを手にしている人に出会う。
いちアート好きだった林田がKAMUをつくったのは32歳のとき。その突破力の背景には、10代を上海で過ごした経験がある。「当時の上海のやっちゃえ精神やスピード感には刺激を受けました。中国は今でも次々とプライベートミュージアムができていて、彼らは3階建ての2階までしかできなくても開けてしまう。理解が足りない部分は認め、欧米の識者を招く。それが10年も続けば文化的な人が育っていきます」
一方日本では、「美術館は赤字になるから」と敬遠されていた。資本面でもスピード面でも世界から遅れている。黒字経営の美術館は本当にできないのか。そう問いをもった林田は、「コレクションも資金も人脈も劣るなか、スピードだけは大事にしよう」と、構想から6カ月での開業に挑戦した。



