経営・戦略

2025.01.09 13:30

海外著名VCが飲食DXのダイニーに投資した理由

山田真央|ダイニー

山田真央|ダイニー

11月25日発売のForbes JAPAN2025年1月号の特集「日本の起業家ランキング2025」でTOP20に選出された、ダイニーの山田真央。

2024年9月、ダイニーはシリーズBラウンドで74.6億円の大型調達を実施した。注目すべきはその出資者だ。

ShopifyやPinterest、LinkedInなど多くのユニコーン/デカコーン企業を創出してきた老舗VCのベッセマー・ベンチャー・パートナーズ、TencentやZoom、Uber、Airbnbなどに出資している香港名門ファンドのヒルハウス・インベストメント・マネージメントなど4社が増資を引き受けた。ベッセマーとヒルハウスにとって初めての日本のスタートアップ投資となる。

なぜ海外の著名VCは初の国内投資先として、ダイニーを選んだのか。海外投資家からの評価について、創業者でCEOの山田真央は「飲食業界という25兆円の巨大市場であること、日本の飲食DXをけん引していることが数字で証明できたこと、グローバル企業として認識してもらえたこと」と3つ挙げた。

18年に創業した同社は、スマートフォンからメニューを注文するモバイルオーダーシステムから始まり、POSレジ、顧客管理、シフト・勤怠管理、決済のクラウドサービスを展開。従来はさまざまなツールを使って管理せざるをえなかった飲食店の業務を、オールインワンで支援できることを強みに、唯一無二のポジションを築いてきた。

「串カツ田中」「塚田農場」といった大手飲食チェーンなどでも利用が進み、導入店舗数は約3000店舗、24年のARR(年間経常収益)は前年比約3倍の20.3億円を見込んでいる。

さらに、グローバル展開を見据え、22年から海外採用を本格化。帰国子女の山田はもとより、社員の英語力も徹底的に鍛え、取締役会は英語で実施するなどグローバル進出に向けて着実に社内体制を整えてきた。「会社の所在地は大きな問題ではない。自分たちはたまたま日本にあって、取締役が日本人なだけのグローバル企業。海外投資家からもそう見てもらえたことが今回の調達につながった」と振り返る。

海外展開のロードマップとして、まずはアジア圏での進出を見据える。国内の飲食店が海外へ店舗展開する際に、ダイニーのサービスを現地でも使用してもらいながらローカライズを行い、ローカル飲食店への導入を推進していく。

将来的には物件の確保からサプライヤーとの契約、何が誰にどれくらいの価格で売れるかといった事業内容の提案まで、日本の企業の海外進出を包括的にサポートするビジネスを構想する。「日本の企業が外貨を稼いで、円で納税し、日本経済に還元する大きな流れをつくりたい」と展望を掲げる山田。こうした志の高さも海外投資家に注目された理由のひとつなのだろう。

一塁打を狙っていないか

国内スタートアップ業界に対して、「目先の黒字化やスモールIPOなど『一塁打』を狙うプレイヤーが多い」と課題感を抱く山田。

「スモールヒットを目指していたら日本は変わらない。ダイニーだけでなく『みんなでホームランを狙おうぜ!』という雰囲気を業界内に醸成したい。国内投資家に頼らない道を選んだからこそ、国内で資金調達を行っているほかのスタートアップが言えないことを声に出し、挑戦を促していきたい」

文=一本麻衣 写真 = ヤン・ブース

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