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健康

2025.01.13 09:45

訪問医療の普及が救急車の出動を減らせるか

shutterstock

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救急車の出動件数が年々増えている。総務省の速報値によれば、2023年の全国の出動件数は763万7967件で過去最高を記録した。搬送された人の約6割は高齢者で、およそ半数が外来診療で帰宅できる軽症者だった。もし、かかりつけ医師の往診があればどうだろう。宮城県を拠点に在宅医療の普及を推進する医療法人社団やまとは、在宅医療の拡充によって救急車の出動件数を減らすことを実証した。

やまとは、東日本大震災をきっかけに結成された医療支援チームをベースに、宮城県登米市と東京都板橋区で在宅医療を中心に行う診療所を開設し、後に法人化した医療法人だ。現在は、宮城県、岩手県、神奈川県、高知県に11の診療所を構えている。また、過疎地での医療活動に興味を持ちながらいろいろな事情で都会を離れられない医師に、移住をせず通勤で診療に携われる仕組みを提供するなど、地方の医師不足解消のための取り組みにも力を入れてきた。
医療法人社団やまと公式ホームページより。

医療法人社団やまと公式ホームページより。

訪問診療が普及すれば、深刻化する救急搬送の増加問題が改善されるのではないかと考えたやまとは、山形大学、東北大学と共同で地域初となる訪問診療クリニック「やまと在宅診療所 登米」が開院した前後での急病救急搬送率(SER)を調査した。全国平均を100として、登米市の年齢分布を調整した上で比較している。

研究チームが2024年に発表した論文によると、SERは2005年が61.8パーセント、2010年が73.2パーセントと増加傾向が続き、2011年には東日本大震災で88.2パーセントまで急増。2012年は89.6パーセントという高水準を維持していた。だが、診療所が開設された2013年には85.6パーセントとなり、続いて 86.7パーセント、83.0パーセント、80.5パーセント、78.1パーと減少していった。これは、在宅医療の効果的な提供が、救急搬送の減少に寄与した可能性を示唆しているという。

研究チームは、「ひとつの地方都市における訪問診療の効果を実証するものであり、全国的に在宅医療を拡充する意義を強調」していると話す。また、遠隔医療を併用することで、さらに効果的で持続可能な地域包括ケア体制を構築できると指摘している。高齢者のみならず、医療機関に足を運ぶのが難しい病人には、訪問診療やオンライン診療はじつに心強い存在だ。病身にむち打って病院の待合室で長時間待つのも辛い。昔のように訪問診療が当たり前になれば、救急搬送ばかりか病院の混雑などの問題も解消されるのではないか。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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