欧州

2025.01.07 16:00

無人艇でヘリ撃墜、ウクライナが史上初の戦果 海戦は新たな時代へ

R-73E短距離空対空ミサイル。2003年6月、フランス・ルブルジェ(Flying Camera / Shutterstock.com)

R-73E短距離空対空ミサイル。2003年6月、フランス・ルブルジェ(Flying Camera / Shutterstock.com)

ウクライナの創意に富む技術者らは7カ月ほど前、ウクライナ空軍から借用したセンサーと赤外線誘導のR-73空対空ミサイルを組み合わせた即席のシステムをこしらえ、それをウクライナ国防省情報総局(HUR)の全長5.5mの無人水上艇「マグラV5」の一部に搭載した。

その1隻が2024年12月末、ロシア軍の武装したMi-8ヘリコプターと交戦し、撃墜した。無人水上艇が空中目標を撃破したのは史上初であり、海戦の新たな時代の到来を告げる出来事になった。HURは戦闘の映像を公開し、「歴史的な攻撃」だと誇っている
ウクライナの使い捨て無人攻撃艇であるマグラV5や「シーベビー」は2024年、すでに傷んだロシア海軍黒海艦隊に大きな打撃を与えた。爆発物を積んだこれらの無人艇は同年2月から6月にかけてロシア占領下クリミアの停泊地を襲撃し、黒海艦隊のコルベットや揚陸艦、哨戒艇、タグボートを相次いで沈めた。

これらの撃沈などによって、黒海艦隊の艦艇は2022年2月の全面戦争開始前の3分の2弱に減った。

残りの艦艇を守り抜く決意を固めたロシア海軍は、クリミアとロシア南部の海軍基地周辺の防御を強化した。これらの基地への進入路は現在、ヘリコプターやラプトル(ラプター)級哨戒艇などによってパトロールされている。

ウクライナ側は、衛星誘導のマグラV5やシーベビーがこれらのヘリや哨戒艇とも戦えるように、2024年春ごろからアップグレードを施し始めた。重機関銃用の遠隔操作式銃塔を備え付けたものもあれば、R-73を装備させたものもある。

R-73で武装した無人水上艇は2024年5月に登場し、ロシア空軍の関係者らを驚かせた。ロシア空軍系のテレグラムチャンネル「Fighterbomber」は「ウクライナはどうにかして(R-73)ミサイルを無人水上艇の遠隔制御システムと連携させた」と述べている

銃で武装したシーベビーは2024年12月上旬、初めて空中目標との戦闘を行った。迎撃に来たMi-8数機に向けて機関銃で数発射撃し、少なくとも1機を損傷させた可能性がある。運用するウクライナ保安庁(SBU)の報告によると、ヘリの搭乗員に死傷者も出たもようだ。

ただし、被弾したヘリは墜落は免れていた。それから3週間後、マグラV5が無人艇による空中目標の撃墜という世界初の戦果をあげた。フィンランドのアナリスト、ヨニ・アスコラは「前例のない出来事であり、黒海でのロシアの作戦に重大な影響を及ぼす」と指摘している

ウクライナは、同様のセンサーやミサイルを地上ロボットに搭載することも可能かもしれない。「ウクライナは無人車両を用いてこの成果を低コストで再現できれば、短距離防空能力を強化できる可能性がある」とアスコラは書いている。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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