宇宙

2025.01.08 10:30

いまだ謎に包まれる「火星の質量が小さい」理由、原因究明に挑む惑星科学者たち

地球と火星の相対的な大きさを理解しやすいように並べて表示した合成画像(NASA/JPL-Caltech)



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では、火星と地球の質量がこれほど異なる原因は何だろうか。

その原因については、主な仮説が3つある。

1つ目は、いわゆるグランド・タック・モデルで、ヨットの操船技術のタッキングに似ていることからこう呼ばれる。形成初期の木星が太陽の方向に内向きに移動した後、反転して反対方向に移動したとする仮説だ。この過程で、初期の木星によって惑星の原材料物質の分布が乱されたことで、火星がより低質量の惑星として形成されたと考えられる。
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木星(とその移動)がなければ、火星は金星や地球くらいの大きさか、もっと大きくなっていたかもしれないと、ケーンは述べている。

2つ目は、低質量の小惑星帯モデルで、火星がより大きな質量に成長するための材料となる物質が火星周辺にほとんどなかったとする仮説だ。

3つ目は、初期の不安定性モデルで、初期の内太陽系(太陽系内部の岩石惑星と小惑星帯を含む領域)が基本的に大混乱状態で、軌道も乱れていたため、金星や地球の軌道を越えた範囲にあった岩石惑星の原材料物質が大きな擾乱を受けた結果、火星よりも大きな天体を合体によって形成することができなかったとする仮説だ。

実際は、火星のサイズを小さいままに保つのに、これら3つの仮説のそれぞれが作用した可能性が高い。だが、これらの仮説のうちのどれが最も見込みが高いかを突き止めるには、太陽系の小惑星帯からこれまでよりはるかに大量の試料の採取が必要になる可能性が高い。

では、なぜこの謎の解決が重要なのだろうか。

内太陽系には4つの大きく異なる惑星が存在するが、その理由についてはまだ本当に解明されていないと、クレメントは指摘する。火星にとって何かがうまくいかなくなったのだろうかと、クレメントは問いかける。もしくは地球にとって何かが、まさに思いがけずうまくいったのだろうか。

塵から惑星を形成

ボルドー天体物理学研究所のレイモンは、火星の質量が小さいのは、太陽系が塵(固体微粒子)を惑星に変える仕組みの副作用にすぎないと指摘している。微惑星を形成中の若い星を取り巻く塵を対象とする理論モデルと継続的な観測の両方を通じて、この仕組みについてより多くを知ることが今後の目標だと、レイモンは述べている。

結論

カリフォルニア大リバーサイド校のケーンによると、太陽系はかなり特異な構造をしており、特に、コールドジュピター(冷たい木星型ガス惑星)を持つ太陽型恒星は全体の約10%にとどまる。したがって、大半の恒星系では、太陽系で見られる以上に多数の金星・地球サイズの惑星形成が可能である可能性があると、ケーンは指摘する。巨大惑星は比較的数少ないということなので、これは宇宙生物学にとって好ましい可能性があると、ケーンは説明した。

forbes.com 原文

翻訳=河原稔

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