インドネシアにある国際林業研究センター(CIFOR)のスベン・ウンダー博士が行った石油経済と森林保護に関する研究では、ガボンなどの国々についてこのような見通しが示された。そのほか、アラブ首長国連邦(UAE)のように、持続可能性に向けた特定分野のプロジェクトに投資している産油国の事例もある。例えば、UAEのマスダールシティー構想は、持続可能性に関する高等教育や研究を、石油収入による住宅開発に結びつけている。こうした取り組みを通じて得られた教訓を生かすことができれば最終的な成功が見えてくる。だが、マスダールシティー構想では当初の野望が縮小されたように、現実にはそうならないことも多い。
その意味で、2024年11月に国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)の議長国を務めたアゼルバイジャンから得られる教訓は興味深い。同国はソビエト連邦から独立した、人口約1000万人の国だ。今から2000年以上前、アゼルバイジャンでは地表近くの石油が自然発火し、古代の火に触発された信仰が生まれたことから、人類の石油探査発祥の地とも言われている。だが、同国の石油資源は急速に枯渇しつつあり、楽観的な予測でさえ、最も収益率の高い油田は向こう30年以内に枯渇するとみられている。
経済の多様化に向け、アゼルバイジャン政府は他の天然資源の利用や、特に運輸と観光を中心としたサービス産業に力を入れることの必要性を理解している。国産の安価な燃料を享受できる年数も限られきたため、首都バクーでは公共交通機関のほか、港湾から劇場まで、サービス産業を支える生活基盤の大規模な建設計画が進められている。
こうした従来型の物理的な建設プロジェクトと並び、より持続可能な未来に向けた同国の取り組みには、極めて重要なソフトな側面もある。その中核は、環境教育や自然保護活動だ。