2人が健全な関係にある場合は、どちらの意見も等しく尊重される。このようなカップルは、損得に基づく取引のような関係性を脱して、信頼に基づく協働的パートナーシップを築き上げることができる。
3. パートナーシップにおける個人性の尊重につながる
「2人ならイエス、1人だけならノー」ルールの大きな強みの1つは、パートナーシップの成熟を促しつつ、それぞれのパートナーの個人性を尊重する点だ。結婚生活は、単なる2人の共同生活ではなく、それぞれに異なる価値観、ニーズ、夢をもつ、独立した2人の個人が手を取り合うことだという事実が、このルールには織り込まれている。このルールは、パートナーシップのために個人性を犠牲にする必要はないということを強調している。個人性は2人の結びつきと共存できるし、2人の結びつきを強化することさえあることも、このルールは強調している。
このルールは、個人の目標と共通目標の両方を尊重することで、カップルが、2人でも個人としても豊かでいられるような環境をつくりだすことができる。1人がもう1人を覆い隠してしまうことを抑え、2人がどちらも個人的な関心を追求しつつも関係に貢献し、批判や抑圧を恐れずにいられる環境を醸成する。
このアプローチはまた、調和を保つために片方のパートナーが過剰に妥協を強いられた場合に生じる反感や、アイデンティティの喪失を回避することにも役立つ。学術誌『Journal of Experimental Social Psychology』に2024年3月に掲載された論文も、この主張を支持している。この研究によれば、理解してもらえている、応援してもらえているという感覚に価値を置くことは、関係への満足度にとって極めて重要だ。
興味深いことに、現在恋愛関係にある人は、自分を知ってほしいという強い思いを抱えている。また、現在パートナーを募集中の人は、自分のことを知りたいと興味を示してくれた人に引かれる傾向にある。このようなお互いの理解への欲求は、豊かなパートナーシップに平等性が不可欠であることを伝えている。
このようなバランスのとれた関係において、パートナーはそれぞれ、より本質的で意義深い貢献ができる。また、バランスのとれたパートナーがいっしょに下す決断は、お互いのユニークな意見への深い敬意を反映し、共通の目標やつながりの感覚を強めるものになる傾向にある。