男性が圧倒的多数の業界だからこそ女性にチャンスがあるはず、と大学卒業後、厳しいすし職人の世界に飛び込んだ。根底にあったのは「どんな場所でもいちばんになれ」という父の教え。すしなら世界にも打って出られる。これだ、と思った。
名だたる店での修業は、男性との体力の差という逃れようもないハンデを思い知らされた。そこで「誰にも負けない強みを身につけたい」と、1年間板場を離れて、仏ブルゴーニュ地方でワインについて研さんを積む。現在、店内とカーヴに2000本近いボトルを保有し、客の幅広い要望に応える。
テレビ番組で取り上げられたこともあり、幸後のもとには若い女性の弟子入り志願が絶えない。「私に憧れてすし職人を目指したなんて聞くと、放っておけなくて」と照れながら話す彼女は、今や7人の従業員を抱えるれっきとした親方だ。店舗経営、若手の育成など責任は大きいが、すでにミシュランも視野に入れる。目指すのは、世界に認められる「オンリーワン」だ。
こうご・めい◎1989年生まれ。上智大学卒業後、東京すしアカデミーに入学。「すし匠」「西麻布 拓」「鮨 あらい」にて約10年の修業を重ね、ソムリエ資格も取得。2023年11月独立し、「鮨 めい乃」開店。今後は月初めに予約を受け付ける予定。