食&酒

2025.01.04 15:00

30億円フルベットの覚悟|濵渦伸次×小山薫堂スペシャル対談(前編)

放送作家・脚本家の小山薫堂が経営する会員制ビストロ「blank」に、NOT A HOTEL代表取締役CEOの濱鍋伸次さんが訪れました。スペシャル対談第16回(前編)。


小山薫堂(以下、小山):最初の創業は、出身地の宮崎県でされたんですね。

濱鍋伸次(以下、濱鍋実はリコーのGRデジタルというカメラが好きで、高専卒業後にリコーの東京本社に就職したんです。でも3カ月の研修を受けて決まった配属先がコピー機で(笑)。その日に辞めました。

小山:もしカメラに配属されていたら、いまもカメラをつくっていたかも。人生って面白い。それで宮崎に戻られて?

濱鍋:ええ。市内の商店街の洋服店でアルバイトを始めたんですが、店長から「高専卒なら通販サイトつくれるよね」と言われて。モンクレールのダウンジャケットを誤発注したんですよ。宮崎は暑いから、10万円のダウンジャケットなんて店頭で売れるわけがない。それをつくったサイトで売ったら一瞬でなくなって。

小山:つまり寒い地域の人が買った?

濱鍋:ええ。そして「あの店はセンスがいい」ということで、商店街のほかの店からもサイトの制作依頼があって。最初はボランティアみたいなことでしたが、2007年に会社を設立しました。23歳でした。

小山:営業はどのように?

濱鍋:テレアポと紹介です。ユナイテッドアローズからも依頼があったりして、最終的に150人規模の会社になりました。

小山:そこまで大きくできた強みは?

濱鍋:エンジニアが大勢いて、オープンソースといわれる無料のテクノロジーを活用していたので、安く早くつくれた。あと、アパレルに特化していたのも良かったかと。

小山:それでZOZOの前澤友作さんにも注目されたわけですね。

濱鍋:ZOZOもBtoB事業の拡大か縮小かを決断しないといけない時期で、「一緒にやればもっと大きくできると思います」と話し、グループインすることになりました。

小山:売却額はいくらでしたか。

濱鍋:30億円です。

小山:宮崎の商店街からのスタートで、夢があるなあ! 最初に何を買いましたか。

濱鍋:僕、30歳になるまで給料が20万円そこそこだったんです。消費者金融からもお金を借りていた。だから30億円が入っていちばん嬉しかったのは、返済後にキャッシングカードを細かく切り刻んだことです。

小山:(笑)。最高ですね。

借金していないと頑張れない

小山:その後、ZOZOテクノロジーズの取締役として働き、独立するわけですね。辞めるきっかけはあったんですか。

濱鍋:前澤さんって本当に事業のセンスが良くて、すごく勉強になったんです。僕はZOZOアプリをつくったりして楽しかったし、辞める気はなかったんですが、前澤さんがある日突然「宇宙に行く」と言い出して。それで同じ日に辞表を出しました。実はそれまでの5年間の話で言うと、10年間ずっと我慢してきた欲求を一回成仏させないといけないと思って、30億円を3年間でほぼ使い切ったんです。

小山:すごい! どういう使い方を?

濱鍋:ポルシェ911やカイエンを含め、車は5台くらい。前澤さんにはワインやアートを教えてもらったり、好きだったヴィンテージ家具を買ったり。あとは旅行ですね。

小山:どんな学びがありました?

濱鍋:やっぱり男子は借金していないと頑張れないんだなと気づきました(笑)。それで次はもっと大きなビジネスをと思って、ホテルをやろうと。
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写真=金 洋秀

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