AI

2025.01.05 09:00

AIの負の側面「人の認知能力を低下させる」職場や学校で

米国立衛生研究所は、過度の依存により生じる「能力の衰退」に警鐘を鳴らしている(Shutterstock.com)

さらに教育専門家らは、学習環境におけるAIの役割の増大は問題解決能力の発達を損なう危険性があると主張している。学生らは根底にあるプロセスや概念を十分に理解せずに、AIが生成した答えを受け入れるよう指導されるようになってきている。AIが教育分野で浸透するにつれ、将来の世代がより深い知的訓練に取り組むことができなくなり、自身の分析能力ではなくアルゴリズムに頼るようになることが懸念される。

職場での精神的な敏捷性へのリスク

AIの認知能力への影響は職場でもみられる。米国立衛生研究所は、AI活用のツールに過度に依存して生じる「AIによる能力の衰退」に警鐘を鳴らしている。AIアシスタントが普及するにつれて、AIがどのように能力開発に影響を及ぼし得るかを考慮する必要があると報告書で指摘している。AIは生産性を高める一方で、人間のイノベーションを阻害するリスクもある。従業員がルーティンワークでAIを頼るようになると、自分の認知能力を鍛える機会を逃す可能性があり、自立した思考能力を制限する精神的な機能低下につながる可能性がある。

さらに、意思決定プロセスでのAIの活用では、組織における人間の判断力や信頼の低下を招くことが懸念される。金融や医療などの分野では、投資戦略や医療診断を推奨するのにAIシステムが使用されることが増えている。最も洗練された大規模言語モデル(LLM)でさえバグが発生する可能性があるため、誤った内容が表示されたり危険な誘導を行ったりするリスクは依然としてある。AIに判断を委ねるほど、自身の判断力を磨く機会は減る。

能力向上のためにAI活用を

人間の能力を代替するのではなく、補強するツールとしてAIを使うことが解決策だ。その解決策を可能にするのは、コラボレーション、コミュニケーション、コネクションであり、これら3つの要素は人間の認知能力を活用する。
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リーダーやリーダーを志す人のために、より高いレベルの思考スキルを身につける文化や機会を作らなければならない。国立衛生研究所によると、AIと効果的に協働するための鍵は、まずAIに頼らずに働く方法を理解することにある。スタンフォード大学の研究者らは説明の重要性を指摘している。AIが共有するのは単なる出力ではなく、洞察だ。最終的な結論がどのようにして導き出されたかを把握し、さらなる探究(そして自立した思考)を促す簡単な言葉で説明できることが大事なのだという。

共同学習であれ、複雑な問題解決であれ、あるいは創造的な思考の練習であれ、目標は人間の知性を中心に据えた空間を創造することであるべきだ。その責任は学習開発(L&D)にあるのか、それとも人事部にあるのか。あるいはマーケティング、セールス、エンジニアリング、それとも経営陣にあるのだろうか。答えは「イエス」だ。最新のテックを取り入れた組織であっても、人間の能力への投資は依然として不可欠だ。AIは人間の認知能力の代替ではなく、補完する役割を果たすべきだ。

AIを暮らしに取り込み続ける中で、AIが私たちを人間たらしめている能力、すなわち思考力、推理力、問題解決能力を損なう可能性があることを常に認識することが極めて重要だ。コラボレーション、コミュニケーション、コネクション。AIの能力について戦略的に考える方法を覚えているだろうか。技術の進歩と認知能力のバランスを注意深く保つことで、AIが人間の潜在能力を低下させるのではなく、向上させるようにすることができる。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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