教育

2025.01.09 15:15

教壇から見た『今どきの大学生の本音』、意外に低い慶大生の自己評価

筆者(Forbes JAPAN編集部で、学生たちを前に)

筆者(Forbes JAPAN編集部で、学生たちを前に)

筆者はわけあって中学から大学までイタリアで育ち、いま日本の慶應義塾大学(文学部外国語教育)で教壇に立っている。優秀かつ繊細な若者たちに直接接し、感じるところが多い昨今だ。意外なほどの「自己肯定感」の低さもそのひとつである。

「自分自身に満足している」若者はフランスで76%!


人間の心というものは繊細である。そしてわたしたち日本人は若い頃から、自己肯定感なるものが、諸先進国に比べて低いらしい。「自分自身に満足している」若者は57.4%なのだが、アメリカでは73%に上り、フランスも75%とあって、その違いはなかなか不安を誘うものである*。

*「我が国と諸外国の若者の意識」内閣府調査

*「我が国と諸外国の若者の意識」内閣府調査


冒頭のとおり、日本の学生たちと直接触れる機会を得ているいま、彼らの能力の高さとその多様性を日々実感する。

なにしろ彼らは、小学校から家庭科で料理や裁縫まで学び、音楽の時間では楽器を弾き、学校が終われば教室の掃除もする。さらに放課後の部活動では多彩なスポーツをこなし、図工室では絵を描き、夏はプール、運動会では集団演技をしてダンスも踊る教育を受けてきたのだ。この国の義務教育課程は、インプットがてんこ盛りだ。それでずいぶんと早いうちから、衣食住の基礎が仕上がっている。だからこれほど一人暮らしできる大学生も多いのだろう。

ひるがえってたとえばイタリアの学校では、衣食住に纏わる授業はない。授業中にパスタを茹でたり、裁縫をしたり、雑巾を絞ることはない。運動会や文化祭もないし、なにしろ筆者も勉強以外のことを学校でやった覚えがあまりない。

料理や裁縫、楽器演奏まで学び、スポーツも絵も水泳もダンスも学ぶ日本人の若者たち。なのにいったいなぜ、彼らはこれほど自己評価が低いのだろうか。

日本企業の上司たちはよく嘆いている。“いまの子たちは、怒ったらすぐ辞めてしまう。会議が静まり返って、企画も出てこない。主体性が見られない。何を考えているのかわからない“。
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文=長谷川悠里 撮影=曽川拓哉 編集=石井節子

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