英国アルツハイマー病協会で研究・イノベーション部門の副部長を務めるリチャード・オークリーは、海馬に関する仮説を「興味深い」としながらも、実際に脳内でこうした変化が起こっていることを示すスキャン画像による裏付けがない点に注意を促している。また、生涯にわたって複数の異なる職業に就く人もいる事実を調査しておらず、「遺伝や社会経済的地位など、アルツハイマー病の発症リスクに影響し得る生物学的・社会的要因についても検討していない」ため「確たる結論を導き出すのは難しい」と述べた。
認知症の症例、多くは予防可能
医学誌ランセットの認知症に関する専門家委員会(The Lancet Commission on Dementia)の報告によれば、世界で確認されている認知症の症例のほぼ半数は予防可能だと考えられている。そして、ナビゲーション処理に費やす時間の長さよりも、他の社会的、生物学的、生活習慣的要因(運動、糖尿病、孤独感など)のほうが、認知症とはるかに強い関連性がある。
認知症になるリスクは誰にもあり、リスク要因のいくつかは単純に回避できない。しかし、対処できるリスク要因もあり「誰でも対策を講じればリスクを軽減できる」とオークリーは言う。飲酒量を減らすこと、体をもっと動かすこと、禁煙すること、高齢になっても活動的な社会生活を維持することなどだ。
「認知症にならないためには、車を運転する際にカーナビを使わないようにすべきだ、などと提案するのは時期尚早だ」とUCLのハワード教授は述べている。
(forbes.com原文)