特別部門は、ランキングのスコアとは別に、社内や業界内における際立った取り組みを個別に評価するもので、女性活躍推進のために思い切ったアクションを起こし、社員の意識改革や行動改革を実現した事例や、独自の制度設計により多様性理解を促進し、生産性の向上や組織の成長につなげた事例などが対象となる。
今年は、画期的な制度により男性育休取得率100%を達成したエコラボ合同会社が「ベストプラクティス賞」に選出された。
育休を取りたくても、職場に迷惑がかかる、業務の引き継ぎが難しいといった理由で諦めてしまう男性社員は少なくない。エコラボが2023年に導入した「エコラボマイスター人材プログラム」は、定年再雇用契約以降の社員を、育休取得者の担当現場をカバーするために派遣する制度だ。
主な業務は、ホテルやレストランの厨房の衛生管理支援。マイスター人材として派遣されるのは、65歳まで同社の営業として働いていたベテランだ。現場経験が豊富で製品にも精通しているので、業務を安心して任せることができる。マイスター人材を受け入れた職場では「経験者がサポートに入ってくれて現場も非常に助かりました」と感謝の声があがっており、派遣された本人も「定年後も引き続き会社に貢献することができ、やりがいを感じています」と充実感を口にする。
また、育休を取得した男性営業社員からは「得意先やチームメンバーに迷惑がかかるのが心配だったが、安心して育休を取ることができた」「おかげで1カ月の育休を取ることができ、家族との絆も強くなった」と好評で、まさに三方よしの制度だ。
厚生労働省の調査によれば、23年度の男性の育休取得率は30.1%で過去最高を記録した。しかし、育休による欠員をどう補填するかという問題について、多くの企業ではリソース不足を理由に対処せず、現場がしわ寄せを被ることになりがちだ。エコラボはこの問題に組織全体で向き合い、人材を循環させることで、男女問わず働きやすい体制を実現した。
プログラム導入から1年で、同社は男性育休取得率100%を達成。24年度からは、男性比率が高い営業職社員の有休取得促進にも活用し、取得日数は前年同期比において全事業部でトータル5%強増加したという。管理職を含めた従業員の意識・行動改革へとつながった、実践的で優れたプログラムといえるだろう。
エコラボ◎1923年に米国で創業。業務用洗浄剤・除菌剤、食品衛生に関する製品およびソリューションを提供する事業を、世界170カ国で展開。日本では69年に事業開始。