「デジタルノマド」(Digital Nomad、デジタル遊牧民)とは、インターネットを利用して場所にとらわれずに仕事をしながら、世界各地を旅しつつ生活する人々のことだ。
場所に依存せずに働けることは、多くのビジネスオーナーや会社員、フリーランサーにとって夢のような話である。オフィスに出勤する必要がなくなり、同僚と同じタイムゾーンにいる必要さえないのは自由であり、刺激的でもある。こうした環境の変化を活かし、デジタルノマドになろうと考えるのは自然なことかもしれない。
SNSで目にするデジタルノマドのライフスタイルは、どこかのきれいなビーチでカクテルを飲みながらメールに返信するといった、非常に魅力的なものに映る。しかし、こうした生活には独自の課題があり、必ずしも誰にでも合うわけではない。
もしデジタルノマドになることを考えているなら、海外への片道航空券を予約する前に、次の5つの問いを自分に投げかけてみるとよい。
1. 予測できない状況にどう対処するか
デジタルノマドとして海外のリゾート地や大都市に飛び立つことは、楽しく魅力的に思えるかもしれない。しかし、SNSで見るノマドたちは、海外生活に伴う不確実性についてはあまり語っていないことが多い。一定期間滞在するつもりなら、ビザや滞在許可を申請する必要があり、手続きが長引いていつ結果が出るかわからないこともある。短期の部屋を借りるなどの計画を立てるのも難しく、常に「次はどうなるのか」と落ち着かない状況が続く。こうした不安定さにうまく対応できないと、ストレスやフラストレーションを抱えやすい。
2. 変化を受け入れられるか、それとも恐れるか
変化を受け入れられるかどうかについても考える必要がある。デジタルノマドになるということは、絶えず新しい環境や生活様式の変化にさらされることを意味する。世界中を転々とするにせよ、一か所に腰を落ち着けるにせよ、実際の暮らしは、頭の中で思い描いていたものとは大きく異なるかもしれない。流れに身を任せ、さまざまな文化やライフスタイルを楽しむ覚悟がなければ、常に不快な状態に陥ってしまう可能性がある。3. 自己管理能力はどの程度あるか
フルタイムで旅をしながら働くのは素晴らしい冒険だが、一方で「旅先でも仕事をする必要がある」という事実を忘れてはならない。とくに自営業の場合、締め切りを後回しにして観光を楽しんだり、ビーチでのんびり過ごしたりしたくなる誘惑に駆られることがある。だが、デジタルノマドとして長期的にやっていくには、適度な自己管理能力と規律が不可欠だ。4. 何かから逃げようとしていないか
ノートPCを片手に飛行機に乗る前に、なぜデジタルノマドになりたいのかをじっくり考える必要がある。どこへ行こうとも自分自身はついてくる、ということを忘れてはならない。言い換えれば、「今の問題から逃げ出したい」「自分探しをしたい」という理由でデジタルノマドを始める場合、結果に失望することになるかもしれないということだ。デジタルノマドとしての生活はエキサイティングで得難い経験をもたらすが、それが、今抱えている問題を解決してくれるわけではないのだ。5. 友人を作るのは得意か、孤独にどう対処するか
デジタルノマドとしての生活は孤独を感じやすい。家族や友人から離れているだけでなく、海外のノマドコミュニティや駐在者コミュニティで新しい仲間を作っても、その相手がずっと同じ場所にいるとは限らない。仲良くなったと思ったら数か月後に別の国に移動したり、本国へ戻ってしまうことは珍しくない。デジタルノマドとして生活するには、一人の時間を心地よく過ごせること、新しい友人を作る際に自信と活力を持って行動できること、そして従来の友情とは違う形を受け入れる柔軟性が必要だ。(forbes.com 原文)