宇宙

2024.12.24 10:30

重力が強力でも恒星が存在、銀河系中心のブラックホール近傍で「連星」を初検出

いて座からさそり座の方向にかけて縦20度横34度の範囲の銀河系中心領域を捉えた驚異の3億4000万画素画像。南米チリのパラナル天文台で52の異なる天の領域を撮影した約1200枚の画像を合成して作成(ESO/S. Guisard (www.eso.org/~sguisard))

いて座からさそり座の方向にかけて縦20度横34度の範囲の銀河系中心領域を捉えた驚異の3億4000万画素画像。南米チリのパラナル天文台で52の異なる天の領域を撮影した約1200枚の画像を合成して作成(ESO/S. Guisard (www.eso.org/~sguisard))

太陽系外惑星は、宇宙のどこを探しても見つかる。太陽系が属する天の川銀河(銀河系)の全体で、あらゆる種類の恒星を周回している惑星が5000個以上見つかっている。だが、例外が1カ所ある──銀河系の中心だ。
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銀河系中心に位置する超大質量ブラックホール「いて座A*(Sgr A*)」周辺のこの領域は、惑星や一部の種類の恒星が存在していないように見える。だが、銀河系で最も星が密集していて明るいこの領域で、暗い惑星や未知の恒星を探すのはそう簡単なことではない。

極限重力

学術誌Nature Communicationsに17日付で掲載された最新論文では、いて座A*の近くに連星系が存在するという、まったく予想外のことが明らかになった。これが驚くべき発見である理由は、ブラックホール周辺は重力が超強力なため、連星系は存続できないと考えられていたからだ。

連星系は珍しいものではない。銀河系にある恒星系の約3分の1を占めているほどだ。チリにある欧州南天天文台(ESO)の超大型望遠鏡VLTで収集した15年分の観測データに基づく今回の発見によって、いて座A*の近くでの惑星探索を天文学者がはるかに容易にできるようになった。

銀河系の中心にある超大質量ブラックホールいて座A*(Sgr A*)を周回している連星系D9(右枠内挿入画像)の位置を示した画像。D9はSgr A*の近くで初めて発見された連星系で、挿入枠内はESOの超大型望遠鏡VLTに搭載の赤外線分光撮像装置SINFONIでマッピングした水素輝線を示した画像(ESO/F. Peißker et al., S. Guisard(http://sguisard.astrosurf.com/))

銀河系の中心にある超大質量ブラックホールいて座A*(Sgr A*)を周回している連星系D9(右枠内挿入画像)の位置を示した画像。D9はSgr A*の近くで初めて発見された連星系で、挿入枠内はESOの超大型望遠鏡VLTに搭載の赤外線分光撮像装置SINFONIでマッピングした水素輝線を示した画像(ESO/F. Peißker et al., S. Guisard(http://sguisard.astrosurf.com/))

短期の機会

宇宙の時間という観点からすると、ブラックホールに近接する連星はほんの短期間しか存在できない可能性がある。今回新たに発見された連星「D9」の年齢は、わずか270万年と考えられている。恒星の寿命が数十億年に及ぶ場合もあることから、この連星系はまさに生まれたばかりなのだ。いて座A*の強烈な重力によって連星同士が合体融合し、単一の星になってしまうのだろうか。おそらく、わずか100万年以内にそうなる可能性が極めて高いと、天文学者は考えている。D9が驚くべき発見であるのは、そういう理由だ。
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論文の共同執筆者で、ESOの元学生で現在は独ケルン大学の研究者であるエマ・ボルディエは「これにより、この種の連星系を観測するための、宇宙の時間尺度では極めて短期の機会が得られる」と指摘している。
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翻訳=河原稔

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