2022年の抗議デモ
スターリンクがイランで初めて利用可能になったのは、22歳のマフサ・アミニという女性が、ヒジャブと呼ばれるスカーフで髪や手足を十分に覆っていなかったという罪で警察に逮捕され、拘留中に亡くなったことを受けて人々が抗議デモを開始した2022年のことだった。このデモを受けて米国政府は、イランに対するインターネット規制を緩和する方針を示し、ブリンケン国務長官は同年9月に「イラン政府の検閲に対抗するためのデジタル通信へのアクセス」 を支援するとツイッター(現X)で述べた。マスクは、このツイートに対し「スターリンクを起動する」とリプライした。
「当社のサービスを利用するには、イラン国内に端末を設置する必要があり、政府がこれを支援するとは思えないが、もし誰かが端末をイランに持ち込むことができれば、サービスは利用できる」と当時マスクは語っていた。
その後の数カ月間で、ロサンゼルス在住のイラン系米国人の活動家のメフディ・ヤヒャネジャドは、地元のNPOや民間の寄付者から資金を調達し、約100台のスターリンクの端末を購入し、イラン近郊の活動家や協力者に送付し、密輸を支援した。
ヤヒャネジャドはまた、イランのユーザー向けに端末を改良するようスペースXに要請した。彼の助言を受けて、同社は折りたたみ可能なポールマウントを導入したほか、独自規格のケーブルの代わりに取り外し可能なイーサネットケーブルを採用した。この結果、端末がバックパックで簡単に運べるようになった。
モハンマドは、スターリンクのインターネット接続に伴うリスクを十分に認識している。同社の端末は、空が見える場所に設置する必要があるが、彼は端末を屋内のバルコニーのドア付近に設置し、黒いカーテンで覆っている。「近所に住む人を信用できない」と彼は言う。
そのため、ネットの接続速度は本来の半分程度に低下していると彼は推測している。しかし、それでも「以前のインターネットよりはるかに良い」とモハンマドは語っている。
(forbes.com 原文)