会社の歴史の中に、経営戦略の「正解」が隠されている
──2021年5月に新社長に就任した当初、感じていた課題はありますか?
中期経営計画を策定していた頃から、いくつかの課題を感じていました。大きくまとめると、「会社が目指すべき方向が不明確」「企業活動を支える仕組みの整備が不十分」「社内のコミュニケーションが不足」という3つです。
課題の解決に向けて提示しているのは「旗」「モノサシ」「ラウンドテーブル」を作っていくということ。「旗」は目指す方向性、「モノサシ」は判断に資する情報と基準、ラウンドテーブルとはフラットで活発な情報伝達です。
──貝印が今後、どのように「ブルーオーシャンウェーブ」を作っていくのかについて聞かせてください。
私たちが強化していくべきポイントは「品質」「知財」「研究」の3つの分野です。これまでも多くの新たな人材を採用してきました。特に「研究」は、貝印の過去を紐解いても、基礎研究を基にして新しいものを生み出してきたという歴史があります。
新商品を作るための「開発」ではなく、刃物について深く「研究」していくことこそが、イノベーションを創出すると信じています。
会社の歴史には、その会社の強みや特長から導き出された「答え」が眠っていると思います。もちろん過去のままではなく、現代の環境に合わせてチューンナップする必要はありますが、奇をてらって新しいものに飛びつくのではなく、過去から学び、取り入れながら事業に勢いをつけていく━━事業承継も経営戦略も、そこが一番のポイントなのではないでしょうか。
遠藤 浩彰◎1985年6月、岐阜県関市で貝印株式会社の創業家の長男として生まれる。2008年に慶應義塾大学経済学部を卒業後、同社に入社。生産部門のカイインダストリーズ株式会社や海外関連会社kai U.S.A. ltd. への出向を経て、2014年に帰任する。国内営業本部、経営管理本部の副本部長を経て、経営戦略本部、マーケティング本部、研究開発本部の3部門で本部長を歴任。2018年に副社長に就任し、2021年5月より現職。
(本記事は、事業承継総合メディア「賢者の選択 サクセッション」の記事前編、後編を編集しています。)