ラピダスに50代、60代の人材が集まっている
藤吉:先ほど、北海道は公共事業への依存度が高いというお話がありましたが、明治政府によって殖産興業がなされた土地という歴史的な背景もあるわけですね。阿部:それは拭い難くあると思います。明治政府の頃から北海道の人はやっぱり東京を見ているわけですよ。室蘭に製鉄所と港を作っても、船が向かう先は東京なんですよ。
明治時代はそれでいいとしても、これからの北海道を考えたら、「東京一本足打法」では、厳しい。さっき言ったように今、道内の工学系学生の数は1万2千人ぐらいいるわけですが、ほとんどは東京に行っちゃうんです。ここを変えないといけない。
藤吉:ラピダスなんかはその学生たちの受け皿になれるはずですよね。

藤吉:それは日本の半導体黄金期を支えた人たちということですか。
阿部:そういうことです。この連載でも言ってきたことだけど、日本はそういうノウハウを持っている人を残してきたんだよね。
藤吉:だから反転攻勢に出る余地がある。そこをベースにして若い技術者が根付いていくような環境をいかに作っていくか。
阿部:土地もある、人もある、ノウハウもある。あとはビジョンですよね。ラピダスの株主にはトヨタとかソニーとか錚々たる企業が名を連ねていますが、一方で政府がかなり補助金を出して出資しているんです。そこで政府に依存してしまったら、元の黙阿弥になってしまう。
どうやって北海道に投資を呼び込むか?
阿部:ラピダスの会長は、東京エレクトロンを創業された東哲郎さんで、この方は半導体については圧倒的な専門家です。彼が経産省とか政府にかけあって、政府に1兆円を出させた。これは本当にすごいことだと思います。でも、ラピダスの総投資額って5兆円とされていて、あとの4兆円をどうするのか。また政府から引っ張ってくるのか、それとも別の投資家から引っ張ってくるのか。ここが大事だと思うんです。