北海道の企業はアジア市場を目指せ
阿部:とにかく民間投資が進まないというのが北海道の積年の課題なんです。このチャート(北海道の生産および生産要素)を見ても、北海道の人口518万人は日本の全人口の4.1%に当たるわけですが、GDPで見ると、北海道のGDPは日本全体のGDPの3.7%でしかない。つまり、一人当たりのGDPが全国平均よりも低いわけです。一方で面積で見ると、日本全体の22%を北海道が占めている。ポテンシャルはあるんだから、北海道は「これからなんだ」という言い方もできます。そのカギを握るのは政府依存から抜け出して、民間が立ち上がることができるかどうか。

阿部:北海道の調剤薬局大手で「アインファーマシーズ」という会社があって、ここの大谷(喜一)社長とはアインが上場した時からつきあいがあります。
アインが上場後苦境にあった時に投資したことがあったんですが、大谷さんは今でもそれを覚えていてくださっていて、社史にも「あのとき、スパークスが……」と書いてくれているほどで(笑)。ただアインは大成功した会社ですが、モノを作っているわけじゃないんですよね。
藤吉:やっぱり製造業が必要ですか。
阿部:そうですね。雪印とかよつ葉とか北海道ならではの酪農関係の会社はありますが、成長に限界があるんですね。というのは、やっぱり市場が常に東京なんですよね。
僕はこれからの北海道は、もっと別の場所、具体的にはアジアに市場を求めていくべきだと思います。
藤吉:シンガポールやタイなどアジアの国々では北海道ブランドの商品が人気だそうですね。北海道へのインバウンドもほとんどがアジア圏からですし。
阿部:何といっても所得の上昇力が違うんです。このチャートは以前も見ていただいたかと思いますが、アジアにおける年間可処分所得が35000ドル(約500万円)以上の人口の変化を表しています。日本は今、6900万人いますが、2030年には6600万人に減ってしまう。

つまり日本の人口の9.8倍の富裕層の市場が出来ていくんです。東京の市場を目指すよりも、最初からアジアを目指したほうが理に適ってますよね。
藤吉:確かにその通りですね。