2. 非現実的な期待
恋愛関係において私たちは、「最高の瞬間」として感じられた興奮にとらわれがちだ。ロマンスの始まり、ハネムーンの時期、記憶に刻まれた旅行。こうした瞬間は多幸感を生み出し、将来の体験を評価する基準となる。一方で、こうした傾向により非現実的な期待も生まれる。つまり、あらゆる時間が、濃密で完璧に近いものであるべきだという期待だ。そして、現実に直面し、関係が否応なしに穏やかなルーティンの段階に入ると、日常生活の繰り返しやそれぞれの個人的な課題、あるいは感情的ダイナミクスにおけるシンプルな変化といったものから、落胆が生まれることがある。
しかし真実は、恋愛関係は天にも昇るような気持ちがずっと続くようなものではない(ほかのどんな感情的な深いつながりもそうだが)。こうした関係は深化するものであり、静かな時間は、長期的な安定や成長に欠かせないのだ。
3. 破局後のバイアス
ピーク・エンドの法則により、別れの後は、恋愛関係についての私たちの記憶が大きく歪められがちだ。別れが辛かったり、劇的だったり、未解決の問題を多く残したりした場合、こうした最後の瞬間が記憶を占領してしまう。そして、恋愛関係の大部分を占めていたはずの、数多くのポジティブな経験を上書きしてしまう。こうしたバイアスにより、恋愛関係全体への認識が歪められる。共有した喜び、楽しみ、つながりといったポジティブな瞬間が追いやられ忘れ去られる一方で、破局の痛みが増幅される。
その結果、恋愛関係の本当の価値を見直すことができず、苦悩や落胆の気持ちが強まる。こうした「記憶の歪曲」により、気持ちの区切りをつけるのが難しくなり、感情面での回復が妨げられ、先に進めなくなることがある。
体験全体が「最後の瞬間」に支配されてしまうと、恋愛関係全体を通した感情の振れ幅を見渡す機会が失われてしまう。しかし、恋愛関係を振り返るこのような時間をもつことは、関係を理解し、手放し、最終的に癒やしを得る上で不可欠だ。