映像制作の民主化
ここで筆者は、こうした技術が現実世界にもたらす影響について考え始める。写真、作曲、グラフィックデザイン、詩や文章創作において、AIによる自動生成が普及した結果、作品価値の低下や平凡なコンテンツの氾濫が起きた。同じことが動画制作にも起こった場合、その影響は甚大だ。
スタンフォード大学のInstitute for Human-Centered AI(HAI)の共同所長で、AI時代の動向分析で名高いフェイフェイ・リーは次のように述べている。
「動画制作の未来は、AIが共同制作者として関与することで再定義されます。これによりプロ級のツールへのアクセスが民主化され、誰もが自分のアイデアを魅力的な映像物語へと昇華できるようになるのです。この変化はコンテンツ制作の手法だけでなく、制作できる人そのもののの範囲を革新するでしょう」
的を射た指摘だと思う。
Today, we’re announcing Veo 2: our state-of-the-art video generation model which produces realistic, high-quality clips from text or image prompts. 🎥
— Google DeepMind (@GoogleDeepMind) December 16, 2024
We’re also releasing an improved version of our text-to-image model, Imagen 3 - available to use in ImageFX through… pic.twitter.com/h6ejHaMUM4
Veo 2:注目のデモ
筆者はGoogle DeepMindが公開したVeo 2のデモ映像を視聴した。そこには、まるで無から生み出されたようなかわいらしくふわふわした生き物が登場し、1980年代の作品が壁の落書きに見えるほど洗練された映像が展開されていた。また、男女の頭部や身体を写実的に再現した上で、奇妙な紙吹雪状の色彩物体をあしらった映像、自然と幻想が混在した風景、蜜のような物体に覆われた摩天楼など、多彩な表現が示されていた。しかも、それらは物理的整合性を備えており、ウィットモアがポッドキャストの序盤で言及した「動画版チューリングテスト」を軽々と通過したかのように見える。
今後、この技術が数十億ドル(数千億円)規模の市場にどのような影響を与えるかは未知数だ。映画制作会社は、巨大な費用をかけて俳優や制作スタッフを揃える代わりに、すべてを大規模言語モデルや生成AIに外注することを選ぶのだろうか。また、現実世界の物理法則を学んだAIが生み出す映像を我々が視聴する時、それは心にどのような影響を与え、視聴体験をどう変えるのだろうか。
これらは重い問いである。家庭のストリーミング映像や映画館の大画面で目にする映像が、実はAIによって制作されたものであると知ったとき、我々はその事実にどう向き合うべきなのか。その感情や意識の変化を考える時期にきているのかもしれない。
(forbes.com 原文)


