「即座に、これこそウクライナ軍が必要としているものだと気づきました」とスマザーズは筆者に語った。
光ファイバードローンはゲームチェンジャーになり得る。だが当時、それを手にしているのはロシアだけだった。
スマザーズは、ウクライナもジャミング不可能なドローンを配備できるようにすることをみずからの使命と考えた。
7カ月後、彼はそれに見事に成功する。
光ファイバードローンという「福音」
ウクライナ側の関係者と記事を共有するだけでは不十分だった。また、裏づけとなる技術文献やウェブサイトを探し出して伝えても、アイデアが採用される保証はなかった。ウクライナのドローンをめぐっては数々の「素晴らしいアイデア」が語られている。その中で耳を傾けてもらうには、「特別な何か」が必要なのだ。光ファイバードローンというアイデアは埋没しかねなかった。実際、懐疑的な人たちは端から、現実にはうまくいかないと考えられる理由を挙げがちだった。ケーブルは絡まったり切れたりするだろうし、操縦できる距離も短すぎる。装置は重すぎ、ドローンを機動的に飛ばせなくなる。コストも高すぎる。もっと有望なプロジェクトはほかにある、と。
だがウクライナには、このアイデアを前に進めるべき大きな理由がひとつあった。ロシア軍の電子戦は着実に激しくなっており、前線にますます多くの電子戦システムが投入されるようになっていたのだ。
報告によれば、ウクライナ軍のFPVドローンの50%超がジャミングで落とされていた。場所によってはそれ以上の墜落率になることもある。ウクライナ軍の操縦士たちは、対ドローン防御がとりわけ堅固な陣地に対する攻撃を断念せざるを得なくなっていた。ジャミングの「壁」にぶつかったためだ。
こうした防御を完全に無効化するのが、光ファイバーFPVドローンだった。
スマザーズは独自の光ファイバードローンの製作に取りかかる。そして3カ月後、彼はでき上がった試作機と、数千ドル相当の光ファイバーケーブルなどの機材を携え、ウクライナへ向かった。光ファイバードローンという「福音」を伝える使命を帯びた「宣教師」として。