ロシアの「バンダル王子」、中身は中国製?
ロシア軍は依然として、「ノブゴロドのバンダル王子(KVN)」と呼ばれる当初の製品にこだわっているらしい。ウクライナの情報筋によれば、このドローンは中国のスカイウォーカー社のリバッジ(名前を変えただけの)製品とされ、同社製品の小売価格は2000ドル(約31万円)あまりだが、ロシア軍は1機につき1万7000ドル(約260万円)を支払って調達しているという。対照的に、ウクライナ軍は設計をたえず進化させており、たとえば光ファイバーがよりスムーズに抜けていくような機構に変更している。スマザーズはできる限りコストを抑えたつもりだったが、ウクライナ側はさらに低コスト化を図ったという。
「彼らはオリジナルのデザインを踏まえつつ、簡素化しました」とスマザーズは説明する。
価格が手ごろになればなるほど、導入数は増えていく。現状の光ファイバードローン数は、導入で半年先行し、国の資金提供も受けるロシア軍のほうが大きく上回っている。だが、ウクライナでの光ファイバードローンの製造数が増えるにつれて、状況は急速に変わりつつある。スマザーズが関心の種を蒔いた甲斐もあり、ウクライナでは光ファイバードローンのエコシステムが成長し、発展している。
光ファイバー技術の応用分野はFPVドローンに限らない。使用が広がってきている地上ロボット(UGV、無人車両)や遠隔操作兵器でも、かねて接続の維持が課題だった。そこでの問題はジャミングの影響というよりも、無線通信が見通し線上に限られる際の難しさによるものだ。光ファイバーはジャミングを無効化するだけでなく、こうした問題も解決してくれる。
いまでは固定翼機型などほかの種類のドローンのなかにも、光ファイバーで制御されるものが出現している。光ファイバーは攻撃だけでなく、偵察などほかの任務にも使用されるようになるかもしれない。
とはいえ、光ファイバー操縦が無線操縦に完全に取って代わることはないだろう。ジャミングが問題にならない場所では、やはり無線のほうが便利だ。一方で、電子戦がドローンに対する主要な防御手段になっているところでは、光ファイバードローンが切り札になるだろう。
スマザーズはウクライナの仲間たちとさらなる性能向上に取り組んでいる。彼によれば、かつてないほど飛行距離を伸ばした光ファイバードローンも試験飛行させたという。
スマザーズは光ファイバー関連以外にも、ドローン戦のための大きなアイデアを温めている。同時に、ウクライナの仲間たちとこれまでに成し遂げたことにも満足している。
「光ファイバードローンを実用化できたのはすばらしいことです」とスマザーズは誇る。「最初に読んだ記事がすべての始まりでした」
(forbes.com 原文)