初の実戦テスト
スマザーズは、ウクライナ領土防衛隊の外国人義勇兵部隊「国際軍団(インターナショナル・リージョン)」のいる最前線に赴いた。現地部隊は、ロシア軍のある陣地に対してFPVドローンを使いたがっていたが、多数の電子戦システムによって厳重に妨害され、手を焼いていた。付近に飛ばそうとしたドローンはことごとく墜落していた。観測ドローンは遠くから陣地を見ることはできたものの、どのようなドローンも近づけなかった。そこに、光ファイバーFPVドローンが初めて実戦投入された。モニターの周りに皆が集まり、ドローンから送られてくる映像を見つめた。ドローンはデモンストレーションと同様に、完璧に動作した。ジャマーの影響をまったく受けず、衝突の瞬間までクリアな信号を送り返してきた。
「ドローンが命中すると大きな轟音が響きわたりました」とスマザーズは振り返る。「達成感を味わいました」
ドローン対策は万全と思い込んでいたロシア側が受けたであろう衝撃は想像に難くない。これはウクライナ軍が光ファイバーFPVドローンを用いて行った最初の攻撃として知られているが、作戦の安全上の理由から映像が公開されたのは1カ月あまりあとのことだった。
それ以来、ウクライナ軍の光ファイバードローンによる撃破はさらに数回確認されている。経験談の報告だが、命中率は、味方によるものも含めジャミングの影響を受けやすい無線制御ドローンよりもはるかに高い80〜90%ほどに達するという。
ウクライナでは現在、複数のグループが独自に光ファイバードローンの量産に乗り出している。筆者が11月に取材した3Dテック社は独自のシステムを設計し、別の会社のエンジニアであるアントン・モホリベツィは、鹵獲されたロシアのドローンをリバースエンジニアリング(分解・解析)して開発したという。ドイツのハイキャット社は8月、ウクライナで自社製の光ファイバードローンの試験を行ったと伝えられるが、その後このプロジェクトが進展したのかどうかについては説明していない。
こうした取り組みによって光ファイバードローンの技術は実証され、ウクライナでのその技術基盤が整えられていった。現時点では、製造されているFPVドローンに占める光ファイバー通信型の割合はごくわずかかもしれないが、その数は急速に増えてきている。