宇宙

2024.12.19 12:30

木星の火山衛星イオに「マグマの海」存在せず NASA探査機データが示唆

木星の火山衛星イオを捉えた画像。木星から反射した太陽光(木星照)によって夜側が照らされている。57回目の木星接近通過を実施したNASA探査機ジュノーが2023年12月30日に撮影(Image data: NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS Image processing by Emma Wälimäki © CC BY)

木星の火山衛星イオを捉えた画像。木星から反射した太陽光(木星照)によって夜側が照らされている。57回目の木星接近通過を実施したNASA探査機ジュノーが2023年12月30日に撮影(Image data: NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS Image processing by Emma Wälimäki © CC BY)

木星の火山衛星イオの表面下にあると従来考えられていた浅いマグマの海(マグマオーシャン)は、存在しない可能性があるとする最新の研究結果が発表された。


木星の四大衛星(ガリレオ衛星)の中で最も内側の軌道を周回しているイオは、太陽系全体の中で最も火山活動が活発な天体だ。表面には400を超える火山があり、地上の望遠鏡で撮影できるほど激しい噴火を起こしているものもある。

木星探査機ジュノー

学術誌Natureに12月12日付で掲載された論文によると、今回の研究は、2016年から木星の周回探査と、その衛星へのフライバイ(接近観測)を行っているNASAの探査機ジュノーが収集したデータに基づくものだ。

ジュノーは2023年12月と2024年2月、表面からわずか約1500kmの距離までイオに接近し、画像を撮影した。これは、NASAの探査機ガリレオが木星の周回軌道に投入されて以降の20年以上の間にイオに接近したどの探査機よりも近くまで到達したことになる。画像は、ジュノーに搭載された200万画素のカメラ「JunoCam(ジュノーカム)」で撮影した。

全球規模のマグマオーシャン?

ジュノーによる画像撮影と接近観測時に実行された実験によって、マグマが局所的に分布しているのか、あるいは全球的に分布しているのかが明らかになると期待された。

今回の分析の結果、木星の影響によるイオの潮汐加熱量の推定により、イオの火山活動のエネルギー源がマグマオーシャンである可能性は低いことが明らかになった。

木星の衛星イオの火山噴火を捉えた画像。画像上部と中央下の2カ所に噴煙が見える。NASAの木星探査機ガリレオが撮影(NASA/JPL/University of Arizona)

木星の衛星イオの火山噴火を捉えた画像。画像上部と中央下の2カ所に噴煙が見える。NASAの木星探査機ガリレオが撮影(NASA/JPL/University of Arizona)

潮汐加熱

イオは、潮汐加熱を理解するのに太陽系で最適な天体と考えられている。巨大ガス惑星の木星だけでなく、その四大衛星のうちのイオを除く3衛星とも、常に重力の綱引き状態にある。また、公転軌道が楕円形(偏心軌道)のため、木星から受ける重力の強さが変化する。

公転周期の約42時間ごとに継続的に引き伸ばされたり押しつぶされたりすることで衛星が変形し、摩擦による潮汐加熱が発生する。この加熱量が非常に大きいため、表面下にマグマ(地下にある溶岩)が形成されるのだ。
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翻訳=河原稔

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