米Forbesは第二次トランプ政権を「太陽系」にたとえた。トランプに引き寄せられた惑星が振り回されるイメージだ。そんなトランプ新政権誕生とともに幕を開ける新時代は、どう作られていくのか。
まさに「トランプ・マスク政権」と言っても過言ではないかもしれない。政府の歳出を削減する政府効率化省(DOGE)が新設され、提唱者のイーロン・マスクがトップに就任した。希代のイノベーターであり、破壊者であるイーロン・マスクがディール政治のトランプとどんな時代をつくるのか。まずは「トランプ系宇宙の誕生」と銘打った米Forbesの最新号(24年12月-25年1月)のレポートから紹介しよう。
米大統領選で当選確実となった夜、ドナルド・トランプは勝利演説で、自身の政界復帰を支えた人々に感謝を述べていた。そのとき、群衆のなかから「イーロン! イーロン! イーロン!」という声援が湧き上がった。
「新しいスターが誕生した。スターの名はイーロンだ!」とトランプは称賛。その後世界一の富豪について4分間の即興スピーチを始めた。78歳の次期大統領であるトランプは、この「超天才」にアメリカの政策と連邦予算をかたちづくる広範な権限を与えると約束している。
マスクは「次世代のトランプ派」のなかで最も有名で、群を抜いて裕福な存在だ。ほかには、ポッドキャスターのジョー・ローガン、バイオテクノロジーで成功した億万長者のビベック・ラマスワミ、そしてUFC(総合格闘技)代表のダナ・ホワイトが名を連ねている。
一部は閣僚として起用される見通しだが、ほかの者は、トランプがゴルフをしたり、フロリダ州の私邸マール・ア・ラーゴで食事をしたり、FOXニュースを観たりしている間に耳打ちをする「キッチンキャビネット」(非公式の助言者)として、閣僚よりさらに影響力のある役割を担うかもしれない。
この役割は決して楽なものではない。ブルッキングス研究所によれば、トランプの第1次政権では高官の92%が入れ替わった。国家安全保障担当補佐官を4人、広報担当ディレクターを7人交代させ、その中にはたった11日間で解任されたものもいる。非公式の助言者たちも同様に次々と信任を失ったり、取り戻したりを繰り返した。
それにもかかわらず、卓越した経歴を持つひとたちが次々とポストを求めて名乗りを上げている。投資家のスコット・ベッセントは財務長官に指名され、マスクとともに連邦支出を削減する予定だ。「内からでも外からでも関わりたい」とベッセントは語るが、皮肉にも彼はかつて、MAGA(トランプ支持者)にとって敵である著名な投資家ジョージ・ソロスの元で働いていた。