すでにある技術
宇宙にはすでにデータセンターがあるのだろうか、それともこれから急激に展開されていくのだろうか。どんなことが可能なのかを示す重要なプロジェクトがいくつかある。たとえば、SMARTIEと呼ばれる技術は、300ギガフロップス以上の演算能力を備えたタイル(チップレット)を使用することで高性能を実現している。
こうした技術を搭載した衛星では、AI(人工知能)関連のタスクも処理する。主にセンサーや機器のデータを処理するとウィキペディアにはある。衛星の中身は、英航空・防衛大手BAEシステムズが開発したRAD750耐放射線性シングルボードコンピューターだ。
これらの機器の設計は、宇宙データセンター設置に向けた第一歩といえる。
宇宙データセンターの運用費
内部関係者によると、基本的に宇宙でのデータセンター運用に必要なリソースの減少はコスト減を意味する。「電気代に1億4000万ドル(約220億円)払う代わりに、打ち上げと太陽光発電に1000万ドル(約16億円)注げばいい」とルーメン・オービットの共同創業者で最高経営責任者(CEO)のフィリップ・ジョンストンは言う。
共同創業者3人は全員、輝かしい職務経歴と学歴を持っている。ジョンストンはハーバード大学とコロンビア大学で学んだ英才で、最高技術責任者(CTO)のエズラ・フィールデンはエアバスに勤務し、米航空宇宙局(NASA)の研究にも貢献した。チーフエンジニアのアディ・オルテアンは、スペースXの主任ソフトウェアエンジニアとして衛星通信スターリンクの開発に携わっていた。
ジョンソンとフィールデンはインタビューで、これまで関わった仕事が、宇宙空間を利用して太陽に近い場所で大規模なコンピューティングを行うというアイデアにつながったと語っている。
SFめいたコンセプトに聞こえるかもしれないが、宇宙へのデータセンター設置はいくつかの説得力のある理由から非常に理にかなっている。変化の激しいダイナミックな時代に突入した私たちは、最善のハードウェア設計を見極めようとしている段階にある。一部のハードウェア運用を改善できるのであれば、たとえそれが電力をかなり必要とするAI関連ハードウェアを宇宙に送ることだとしても、実行に移す可能性は高い。したがって、ルーメン・オービットのような試みには今後も関心と資金が集まりそうだ。
(forbes.com 原文)