この点を踏まえて、今年9月に学術誌『フロンティアーズ・イン・サイコロジー』に掲載された研究では、異性に対して最もうらやましいと思う具体的な特性や経験、特権を掘り下げている。
羨望はネガティブな感情としてとらえられることが多いにもかかわらず、驚くほど示唆に富んでいるものでもある。私たちが重視したり欲したりしていること、あるいは自分に欠けていると感じているものを反映しており、文化的規範や個人的な体験によってさまざまな形で現れる。
慣習的なジェンダー(社会的・文化的につくられた性差)の障壁を取り払おうという取り組みがあるにもかかわらず、男女とも依然として異性が持つある種の自由や資質、または強みをうらやんでいる。こうした感情は、進歩が見られる多くの点とまだ課題が残っている点を浮き彫りにしている。
本記事では、異性に対してうらやましく思っていることから読み取れる現代のジェンダーの力学、また急速に変化する現代社会でなぜそうした感情が続いているのかなど、研究結果の詳細を紹介する。
羨望をテーマにした理由と研究方法
チェコのオストラバ大学の教育・学校心理学部長で研究を率いたテレザ・キンプロバは科学ニュースサイトのPsyPostとのインタビューで「このテーマに興味を持つようになったのは授業がきっかけだった。学生間の議論の中で、特有の感情表現やアンバランスさに気づき始めた。学生らがうらやましいと口にした」と説明した。「新しい世代の若者たちがチャンスや性別による社会的役割の浸透について考えを持つようになる中で、どのような状況で異性に対してうらやましいという感情を持つのか、興味を持った」のだという。
そこで、異性に対してうらやましく思うことを探るため、研究チームはチェコの15〜94歳の男女1769人にアンケートを行った。調査は自由回答形式の簡単な質問が1つだけで、「異性のどういったところをうらやましく思うか」というものだ。 当然ながら回答はさまざまで、単語が一つだけのものもあれば、段落に及ぶものもあった。