「拝読させていただきました」の意味とは?
「拝読させていただきました」は、相手からもらった文章や資料などを「読んだ」ことを丁寧に伝える表現として用いられるものです。 しかし、この表現は本来「拝読(はいどく)」という謙譲語の「読む」と、「~させていただく」という謙譲表現を重ねることで二重敬語となっており、正しい敬語表現としては問題視されがちです。
正確には「拝読いたしました」や「拝読しました」がより適切であり、「拝読させていただきました」は過剰な敬語表現になってしまいます。 つまり、この表現は相手を尊重しようとするあまりに敬語が二重になったもの。結果的に、かえって不自然な印象を与える可能性があります。 ビジネスシーンでは特に言葉遣いが厳しく見られるため、「拝読させていただきました」は避けて、「拝読しました」「拝読いたしました」といった適正表現にした方が無難です。
なぜビジネスで「拝読させていただきました」は避けるべきなのか
二重敬語による不自然さ
「拝読」はすでに「読む」の謙譲語であり、相手に対して自分が低い立場で尊敬する意志を示す表現です。 そこに「させていただく」という、謙譲の補強表現を重ねると、過度な謙譲表現=二重敬語になってしまいます。 ビジネスパートナーに対して、必要以上にへりくだる表現は、場合によっては不自然でわざとらしいと受け取られる可能性があります。
シンプルな敬語で十分伝わる意図
「拝読しました」や「拝読いたしました」と言えば、すでに十分丁寧で相手を敬う姿勢が伝わります。 無理に「~させていただく」を付けなくとも、十分な敬意と丁寧さが確保でき、文面がスッキリし、読みやすくなります。
ビジネスシーンでの「拝読」適切な使い方
受け取った資料やメール内容に対して
例えば、顧客から送られた提案書を確認した後、「先ほどお送りいただいたご提案書、拝読いたしました」と言えば、相手への敬意と、確実に目を通したことを端的に伝えられます。 ここで「拝読させていただきました」と言うと冗長で不自然な印象が残ってしまいます。
上司や取引先からの報告文書に対して
上司や取引先からのレポートや調査結果を確認した際に、「ご報告の内容、拝読いたしました。大変参考になりました」と伝えれば、丁寧な敬意表現で理解・確認の意思を示せます。 相手は「しっかり読んでくれたうえで評価している」と安心し、スムーズなコミュニケーションが続きやすくなります。
「拝読」の使いどころと避けるべき場面
読む対象が相手に関連するときに用いる
「拝読」は自分が「読む」行為に謙譲をかけて、相手に敬意を示す表現です。そのため、相手が書いた文書・メール・書類などを読む場合に用いるのが基本です。 一般的な本や記事に対して「拝読しました」と述べるのは過剰な敬意になり、不自然です。 相手が書いた文面や、相手から提供された資料を読んだ場合に限って使うのが無難です。
あえて別の表現を選ぶ場合
相手が自分より下位もしくは対等の立場の場合、「拝読」はかしこまりすぎかもしれません。その際は「読ませていただきました」「目を通しました」など、もう少しフラットな表現を選ぶことで、返ってよそよそしい印象を与えません。
「拝読させていただきました」以外の適切な表現
「拝読しました」または「拝読いたしました」
最もシンプルな正しい敬語表現は「拝読しました」や「拝読いたしました」です。 「拝読いたしました」は「いたす」を用いることでさらに丁寧さを加えた形であり、ビジネス上でも安心して使える表現となります。
「読ませていただきました」
「拝読」ほどかしこまらず、やや丁寧な表現としては「読ませていただきました」があります。 これも謙譲表現であり、相手が用意してくれた文書をありがたく読みました、というニュアンスを持ちます。 ただし「拝読」に比べ、やや柔らかく、フォーマル度は少し下がります。
「目を通しました」
「目を通しました」は、ややカジュアルながらも、丁寧なビジネスコミュニケーションで許容される表現です。 「拝読」ほどの深い敬意は込められていませんが、上司や取引先に対して「資料に目を通しました」と言えば、確認したことを明確かつ丁寧に報告できます。
「確認させていただきました」
資料やメール内容を読んだ上で、その内容を把握したことを伝えるには「確認させていただきました」が効果的です。 これは「読む」だけでなく、相手から提供された情報を注意深く確かめたニュアンスも加わり、ビジネスシーンでよく使われる定番表現となっています。
例文で理解する
ビジネスメールでの「拝読いたしました」使用例
「ご連絡をお送りいただき、ありがとうございます。 ご提示の企画書、拝読いたしました。とても参考になる内容で、今後の検討に活かしてまいります。」
この例では「拝読いたしました」を使い、相手の提供した資料を尊重して読んだことを明示しています。
同じ状況で別の言い換え例
「ご連絡いただき、ありがとうございます。 こちらの資料、読ませていただきました。非常に興味深い内容で、再度社内で検討したく存じます。」
ここでは「読ませていただきました」に変えることで、敬意はありつつも「拝読」ほど重くない表現となり、柔らかな印象を与えます。
使い分けのポイント
相手との関係性を考える
目上の人や重要な取引先に対しては「拝読しました」や「拝読いたしました」を使うと良いでしょう。 一方で、同僚や慣れた取引先相手には「読ませていただきました」「確認させていただきました」といった表現でも十分に敬意が示せます。
コミュニケーションのテンポを考慮
文面がすべて最上級の丁寧語で揃っていると、読みにくく非効率な場合もあります。 特に日常的な連絡であれば、ある程度フラットな表現と敬語を組み合わせて、程よいバランスを維持することが重要です。
状況や媒体に応じて微調整
正式な報告書やお礼状などでは「拝読いたしました」のような表現が適していますが、チャットツールなどスピードを重視するコミュニケーション媒体では、もう少し簡潔な言い方が好まれることもあります。
文化的背景・国際的視点
日本語独特の謙譲表現
「拝読」は日本特有の敬語文化から生まれた表現で、相手を上位に置き、自分を低くすることで相手への敬意を示すスタイルです。 海外にはこういった複雑な敬語はあまりないため、外国人パートナーとのメールでは「I have read your document.」など、シンプルな英語表現で十分敬意を示せます。
多国籍チームへの配慮
海外の相手が相手の場合、日本独特の謙譲表現を直訳してしまうと意味が伝わらない可能性があります。 英語で対応する際には、過剰な謙譲を避け、できるだけストレートな表現を使うほうが誤解を防ぐでしょう。
まとめ
「拝読させていただきました」という表現は一見丁寧に見えますが、実は二重敬語となってしまい、ビジネスシーンでは好ましくありません。 正確には「拝読しました」や「拝読いたしました」を用いることで、相手が書いた文章を丁寧に読み取ったことを適切に伝えられます。
また、「読ませていただきました」「確認させていただきました」「目を通しました」など、別の言い回しを状況や相手との関係性に応じて使い分けることが大切です。 海外相手には、英語でシンプルな表現を選ぶことで、文化的な違いによる混乱を防ぐことも可能です。
最終的には、ビジネスコミュニケーションでは、正しく丁寧な表現を使うことでスムーズな情報伝達と信頼構築を目指すことが求められます。 適切な敬語選びによって、相手への敬意を表しながら、円滑なコミュニケーションを実現し、良好なビジネス関係を築くことができるでしょう。