経営・戦略

2025.01.04 13:00

年収1億円も狙える、米富裕層の子どもに特化した「高級家庭教師」

Shutterstock.com

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数年前に名門大学を卒業して、ニューヨークの投資銀行で働いていたスティーブン・メンキングは、ある時自分が、高い収入を維持するために、ワークライフバランスを犠牲にするつもりがないことに気づいた。「小さな子どもを持つ上司たちが、どれだけ彼らと一緒に過ごしているのかを考えた」と、36歳のメンキングは当時を振り返る。

その後、投資銀行を離れた彼は、数学の家庭教師として独立する道を選び、複数の仲介業者に所属した後に、私立学校に通う裕福な家庭の子どものみに特化したエージェンシーのForum Education(フォーラム・エデュケーション)に所属することにした。メンキングは、現在このプラットフォームのトップ5に入る稼ぎ手であり、年収はウォール街で稼いでいた額を上回る50万ドル(約7690万円)に達している。

家庭教師の仕事は、長らくパートタイムの仕事と見なされてきたが、オンライン家庭教師の選択肢が爆発的に増えた現在、家庭教師のグローバル市場の年間収益は、Grand Valley Researchによると約104億ドル(約1兆6000億円)と試算されている。

エドテック(教育テクノロジー)の投資家たちは、この市場がすでに飽和状態で、成功するには、ユニークな価値が必要だと考えているが、Forumはそれを提供している。

Forumの共同創業者でCEOのトーマス・ハウエルは、自身がかつて家庭教師として働いていた経験をもとに会社を立ち上げた。2008年にイェール大学を卒業した彼は、ニューヨーク市の高校生に数学や科学、人文学などを教え、時給45ドル(約7100円)を稼いでいたが、彼のエージェンシーは親たちに1時間200ドル(約3万1500円)を請求していた。

「ある時点では、7つの異なるエージェンシーと契約し、かなりのストレスを感じていた」と話す彼は、2014年に大学時代のルームメイトであるデビッド・フェルプスと共に、8000ドル(約126万円)の貯金を元手に、自身でエージェンシーを立ち上げた。「Forumの運営の仕方は、タレントエージェンシーに近い。家庭教師は資産であり、タレントなのです」と彼は語る。

フリーの家庭教師たちは、ハリウッドの俳優がエージェントに仕事を任せるように、Forumに手数料を払って顧客を紹介してもらう。Forumは、顧客と家庭教師をマッチングし、料金の交渉やマーケティングを行う。その見返りとしてForumは15%の取り分を得る。この割合は他の多くの仲介業者よりも低いとハウエルは述べている。

例えば、バージニア州レストンに拠点を置くK12 Tutoringと呼ばれる業者は、20%から25%の手数料を得ている。同社の家庭教師の多くの時給は38ドル(約6000円)から65ドル(約1万円)で、年間の平均収入は5800ドル(約91万5000円)だ。トップの稼ぎ手でも年収5万4000ドル(約830万円)程度だという。一方、Forumでは家庭教師の平均年収が「確実に6桁に達する」とハウエルは話し、「トップの稼ぎ手は50万ドル(約7700万円)を超える」と豪語している。

スター教師は年収100万ドル超え

Forumの家庭教師のうちの2人は、ニューヨークの有名私立学校の全科目に精通しており、全米のトップレベルの大学に進む生徒たちを教えている。こうしたスター教師たちは時給1000ドル(約15万7800円)を請求しており、昨年の総収入は100万ドル(約1億5300万円)を超えたという。
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編集=上田裕資

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