1. 脱法カンナビノイド事業者の台頭
精神作用を有する合成カンナビノイドや、いわゆる「大麻グミ事件」などが世間を騒がせる中、厚生労働省は該当成分を指定薬物に指定し、規制を進めてきました。しかし、こうした取り締まりは「いたちごっこ」となり、公衆衛生上の問題として厚労省内でも重要視されていたはずです。この背景には、旧法である大麻取締法が部位規制を中心としており、成分ごとの取り締まりにグレーゾーンがあったことが大きく影響しています。成分規制への移行は、このような問題意識を踏まえた適切な対応と考えられます。
2. 既存CBD事業者による薬機法・景表法の逸脱
精神作用を有する合成カンナビノイドの台頭により、脱法業者と合法業者の線引きが大きく変化しました。これに加え、CBD製品の効果効能を直接的に謳う事業者が後を絶たず、広告やSNS上で「~に効いた」「効果があった」といったコメントが散見されています。さらに、法改正に関連するパブリックコメントや署名運動の中で、疾患を抱える方の映像やコメントを利用し、「CBDによって救われた」というストーリーが拡散されています。しかし、こうした内容が同じアカウントで製品販売サイトをリンクしている場合、薬機法違反の可能性があります。
そもそも、日本の食薬区分において、効果効能が高いとされる製品は保健衛生上の観点から「専ら医薬品」に指定されます。これにより、食品や化粧品といった一般品としてのCBD製品は市場から排除されるリスクがあります。この問題は、CBD業界全体の存続に関わる重要な課題です。
3. 医療、尿検査とのバランス
尿検査による「大麻使用罪」の立証に混乱が生じないよう、科学的根拠に基づいたTHC残留限度値が設定されました。この値は、欧州の規制基準を参考に、公衆衛生上の安全性をさらに高める形で導入されたものです。実際、法改正前に行われた「大麻等の薬物対策のあり方検討会」や「大麻規制小委員会」のとりまとめでは、以下のように記されています。「欧州における規制を参考に、保健衛生上の観点からTHCが発現する量よりも一層の安全性を見込んだ上で、尿検査による大麻使用の立証に混乱を生じさせないことを勘案し、適切に設定すべきである」
今回導入されたTHCの残留限度値は、この意見に基づいたものであり、一定の科学的論拠があると考えられます。この規制が業界に与える影響は大きいものの、公共の安全と法的整合性を確保するためには不可欠な措置と言えるでしょう。