世界でもサービスの質の高さで知られる日本の鉄道会社が、イギリスの鉄道システムにどのような影響を及ぼすのか、イギリス現地で注目が集まっている。また、東京メトロにとって初めてとなる海外事業となる今回の共同事業の先行きには日本国内でも期待が高まっている。
以下は英国からの視点での、この共同事業の発表についてのセーラ・パーソンズ氏の寄稿である。
パーソンズ氏は日本に詳しい英国人として英国CNBCニュースにインタビューされ、そのコメントは英有力紙「The Times」にも引用された。彼女は日本に進出を考える英国企業へのコンサルティングを行う「イーストウエスト・インターフェイス」マネージング・ディレクターで、在英国日本大使館主催の「英国ジェットプログラム(語学指導等を行う外国青年招致事業)同窓会」英国の元会長でもある。
東京メトロは99%が予定時刻から5分以内に到着、エリザベス線は87.4%
日本の「東京メトロ」が、2025年5月からのロンドン地下鉄エリザベス線*1 の運営を落札した事業会社、GTS Rail Operations Limitedとの共同事業に参画する *2 という最近の発表を受け、英国の鉄道利用者は期待を膨らませている。ロンドン交通局によると、予定到着時刻の5分以内に目的地に到着しているエリザベス線の列車は87.4%。一方、同じく予定時刻から5分以内に到着している東京メトロは99%だ(2022年の運行状況から)。
エリザベス線の利用者が、日本の鉄道システムの信頼性と定時性が英国でも実現することを期待するのももっともだ。
エリザベス線は英国で最も利用者の多い路線だが、信頼性と定時性にかかわる問題に悩まされ、公共パフォーマンス評価(PPM)では利用者から平均を下回る評価をされている。2024年2月までの1年間で、エリザベス線は、架線の不具合のため、トイレや電源もない状況下、数千人の乗客を数時間にわたって列車の中に閉じ込めてしまう事態にも陥っている。2023年11月には、破損レールが「8日間で4本」見つかったこともあった。
こういった問題は、エリザベス線がたんなる一(いち)地下鉄道にとどまらない、経年劣化に悩む英国の鉄道システム全体につながるセグメントであるという事実にも根付いている。