ヒット作に“引き上げる”
では、ヒット作をつくり続けるために必要不可欠な条件とは何か。ウォルデンは「パートナーシップ」と「キュレーション」の2つを挙げた。「私たちは常にベストと思えるクリエイティブパートナーを選び、次世代クリエイターの育成にも積極的に取り組んでいます。そして世に出す作品を厳選すること(キュレーション)でブランド価値を高めていく。ディズニーの作品づくりにおいては、このパートナーシップとキュレーションの概念がもっとも重要。それが一貫してヒット作を生み出し、作品を成功させる鍵だと思っている」
もちろん、最終的にインスピレーションをかたちにする責任を負うのは、実際に作品をつくるクリエイターたちだ。しかし、彼らが作品のクオリティを高められるよう、継続的に“壁打ち相手”になれるような経験豊富で優れた幹部チームがディズニー側には存在する。キャスティングやロケーション、制作進行などさまざまな面でクリエイターをサポートし、ときにはクリエイターがどのアイデアに集中すべきかを判断する手助けもする。作品をどの方向にブラッシュアップするのかを話し合い、一緒に番組をヒット作へと引き上げていくわけだ。
「信頼関係を築くことが最優先だと思う。クリエイターのすべての要求に『イエス』と言うことはできないが、答えが『ノー』であっても、創造的な解決策を一緒に見つける手伝いをすることは可能だ。アイデアを交換し合い、前向きな対話を重ねていく。つまりアイデアの有機的な交換です」
クリエイターが思い描いた通りのビジョンを実現させるために、彼女自身が発揮してきた強みとは。
「自分では問題解決能力に優れているのではないかと思っています。クリエイターの前にある障害を取り除く経験も多くしてきましたから。それは単に課題を克服するだけではなく、彼らが創造性を最大限に発揮できる環境を整えることでもあります」
ディズニーのブランドは非常に強い。共同チェアマンであるアラン・バーグマンとのパートナーシップもとてもうまくいっていて、その成果を誇りに思っている、と彼女は言う。
「ディズニーはこれからも、最高の知的財産(IP)を活用し、世界中で最も愛される映画やブランドシリーズを開発・提供していく一方で、テレビ分野においても、最高品質で魅力的な総合エンターテイメントを届けていく。映画とテレビシリーズという2つの分野が相互に補完しあい、お客様に対して極めてユニークで魅力的なコンテンツ体験を提供することができる。このシナジーこそが、ディズニーならではの強みであると思っています」