ウォルデンは、同社でテレビおよびストリーミング向けコンテンツ制作と配信戦略をグローバルに統括している。(劇場公開映画については、同じく共同チェアマンであるアラン・バーグマンが担当)
ウォルト・ディズニー・カンパニーは11月、2025年以降の劇場公開映画や配信作品のラインナップを発表する大規模なカンファレンス「ディズニー・コンテンツ・ショーケース APAC 2024」をシンガポールで開催。今回このイベントに参加した彼女に、インタビューする機会を得た。
ウォルデンは過去30年あまりにわたってテレビ業界でキャリアを積み、『24』『Glee』『グレイズ・アナトミー』など、多くの人が知る名作テレビ番組を世に送り出してきた。『SHOGUN 将軍』を含め、これまでに395回のエミー賞ノミネートと116回の受賞を重ねてきた“すごいヒットメーカー”でもある。なぜ彼女は、世界的ヒット番組を世の中に生み出し続けられるのか。
決め手となったのは「不安」の感情
『SHOGUN 将軍』は開発に10年を要した大型プロジェクトだった。Disney+で配信が始まったのは今年の2月末。11月の第76回エミー賞では作品賞や真田広之の主演男優賞など史上最多18部門を受賞し、これまでにない「リアルな時代劇」への徹底したこだわりも含めて大きな話題となった。手がけたのは、ディズニー傘下のテレビ番組制作スタジオ「FX」だ。「すべてはFXチェアマンのジョン・ランドグラフと彼の開発チームが原点です。彼のもとで作品の開発を担当したHBO出身のジーナ・バリアンも非常に才能ある情熱的な人物で、彼らは常にディズニーが求める『大ヒットの可能性があるアイデア』を探していました。
『SHOGUN 将軍』は壮大な物語性、深みのあるキャラクター、時代背景の魅力、地域性など、世界中の視聴者を魅了しうるすべての要素を兼ね備え、非常に練られたものでした。まさに会社の全員が一丸となって情熱を傾けたパッション・プロジェクトと言えるでしょう」
彼女はFox Televisionからキャリアをスタートさせ、2014年には同グループの会長兼CEOに就任。19年にディズニーがFoxを買収した後は、傘下のABCテレビジョングループの会長も務めた。コンテンツ戦略を統括する彼女の元には、日々多くの作品企画が持ち込まれる。『SHOGUN 将軍』の制作にGOを出す決め手となったのは、どんな要素だったのか。
「私は作品と対峙したときに、緊張や不安を感じるプロジェクトこそ、全力を注いで取り組むべきだと信じている。決め手になるのはいつもこうした感情。『SHOGUN 将軍』はまさにそのような作品でした。驚くほど独創的(original)で、大胆で、挑戦的。FXチームの手にかかれば、素晴らしいものになると分かっていました」
ヒットする番組づくりにおいて今最も重要なことは何かと尋ねると、「オリジナリティ(独創性)」という答えが返ってきた。
「動画配信サービスが台頭するこの時代に、過去作品の派生で開発に取り組むのはリスクが高い。過去に成功した作品を真似して、成功を再現しようとするのは簡単ですが、視聴者が求めているのはどこかで見たようなものではなく、『次の新しいもの(next thing)』なのです」
視聴者は予想を超えた感動や新鮮な体験を望んでおり、そうした期待に応えられる作品こそが真に価値あるものになるという。その「次のもの」になる可能性が大いにあるうちのひとつが、日本を含むアジア発のオリジナルコンテンツだ。