テクノロジー

2025.01.04 09:00

世界最小、医療分野に革命を起こす「5ミクロン」の歩行ロボット

Shutterstock.com

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米コーネル大学の研究チームが、世界最小の歩行ロボットを開発した。このロボットのサイズはわずか2~5ミクロンで、針の尖端に3万体以上が収まるほどの極小サイズであるため、医療や材料科学分野での応用が期待される。

「この極小の歩行ロボットは、顕微鏡のレンズをミクロの世界に持ち込み、通常の顕微鏡ではできない方法でクローズアップ撮影を行なうことが可能だ」と、研究チームのリーダーで、コーネル大学名誉教授のポール・マックイーンは述べている。

コーネル大学によれば、このロボットは、「回折ロボティクス」と呼ばれるテクノロジーの初の実装例だという。回折ロボティクスとは、超微細スケールで画像化能力を持つ、ケーブル不要のロボットを指す。この技術は、光が開口部を通過するときに曲がる現象である可視光の回折を利用している。

このロボットは、工場で稼働する人型ロボットのように自らが歩行するわけではなく、バッテリーや電源は搭載していない。コーネル大学によると、この目に見えないミクロン単位の小型ロボットには、さらに小さなナノスケールの磁石が数百個付いており、磁場の操作によってシャクトリムシのように体をくねらせて「歩く」動作が可能だという。

また、このロボットは流体の中を「泳ぐ」ことも可能で、回折素子を機械的に動かすことでイメージングを行う。

可視光の回折によるイメージング技術は、科学・産業目的で既に使用されている。その中には、細胞や組織を研究する光学顕微鏡や、レンズや鏡の表面の微小な凹凸を検出する干渉計、タンパク質や細胞プロセスを調べる超解像顕微鏡などが含まれる。

このロボットは今後、医療分野での応用が期待されている。「将来的には、回折型マイクロボットの群れがサンプルの表面を歩きながら超解像顕微鏡やその他のセンシングタスクを実行するようになるだろう。ロボット工学と光工学をマイクロスケールで融合させたこのテクノロジーは、大きな可能性を秘めている」と、研究チームは述べている。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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