北米

2024.12.16 16:00

米国の闇市場を支える決済アプリVenmo、薬物取引や売春での利用が拡大中

Venmoは違法薬物や賭博、売春などの決済ツールとしてもこのアプリは人気だという(Nikos Pekiaridis/NurPhoto via Getty Images)

Venmoは違法薬物や賭博、売春などの決済ツールとしてもこのアプリは人気だという(Nikos Pekiaridis/NurPhoto via Getty Images)

米国人が最も日常的に使用する決済アプリの1つに挙げられるのがPayPal(ペイパル)傘下のVenmo(ベンモ)だ。8300万人が利用する同アプリの2023年の決済総額は、前年比13.1%増の2760億ドル(約42兆4000億円)に達したとされている。

Venmoユーザーの多くは、日常の買い物やレストランやカフェでの支払いにこのアプリを使用しているが、違法薬物や賭博、売春などの地下経済を支える決済ツールとしてもこのアプリは人気を博しているという。

性的コンテンツのマーケットプレイスOnlyFans(オンリーファンズ)のクリエイターのジェナと名乗る35歳の女性は、感謝祭の数日前にお気に入りのフォロワーの1人からVenmo経由で2500ドル(約38万4000円)を受け取った。彼女は、この男性と一度も会ったことがないが、彼は過去5年間、数カ月おきに彼女にエロティックなオリジナル動画を発注している。今回の動画でジェナは、スカートにパンティストッキング、ボタンシャツ、そして彼が購入したハイヒールを身に着けた熟女役を演じたという。

「動画内で、私は話をするだけで、裸になるわけじゃないんです」と彼女は話す。

ジェナは、以前は顧客に現金を郵送してもらっていたが、ここ数年で決済アプリに切り替えた。当初はペイパルを利用していたが、顧客が虚偽の返金要求をしたため、アカウントが停止され、今では主にVenmoを使用している。

ジェナや同業者たちにとって、現金はもはや主流ではなくなっている。OnlyFansなどのプラットフォームの台頭にともない、Venmoやペイパル、Cash App(キャッシュアップ)といった決済アプリは、セックスワーカーが顧客とつながり、動画や衣類などを販売するための最も手軽なツールとなっている。例えば、ジェナは使用済みの下着を1点150ドル(約2万3000円)で、DVDを50ドル(約7700円)で販売している。

「もう現金を見ることはほとんどありません。すべてが決済アプリで行われています。これがなければ、私たちは経済から締め出されるでしょう」とジェナは語った。

地下経済を支えるアプリ

米国では現在、セックスワーカーや薬物のディーラー、ギャンブラーたちの間でVenmoを利用した活発なアンダーグラウンド経済が広がっている。そこには、Venmoが承認しているエロティックコンテンツのような合法的なグレー市場の利用だけでなく、賭博業者や薬物販売業者、売春婦への支払いのような違法なサービスまでが含まれる。
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編集=上田裕資

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