北米

2024.12.16 16:00

米国の闇市場を支える決済アプリVenmo、薬物取引や売春での利用が拡大中

Venmoは違法薬物や賭博、売春などの決済ツールとしてもこのアプリは人気だという(Nikos Pekiaridis/NurPhoto via Getty Images)

ニューヨーク・タイムズは先月、トランプ次期米大統領が司法長官候補に選んだマット・ゲーツ元下院議員とその仲間が、女性2人に約1万ドル(約154万円)を支払い、性的サービスを受けたとされる疑惑についての連邦捜査官の調査資料を公開したが、彼らが支払いに使用したのもVenmoだった。ゲーツはこの疑惑を否定し、司法省も告発しなかったが、彼はその後、司法長官への指名を辞退した。
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Venmoの決済総額のうち、どれだけがアンダーグラウンド経済によるものかを推定するのは非常に難しい。親会社のペイパルは、この金額を公開していないが、フォーブスはこのカテゴリが全体の1%未満だと推定している。昨年のVenmoの取引高が2760億ドル(約42兆4000億円)だったことから、このアプリの地下経済における規模は、年間10億~20億ドル(約1540億〜3080億円)と推定される。

また、2022年の調査では、3億8900万件のVenmoの取引メモ(このアプリは、送金の際に小切手のようにメモの記載を要求される)のうちの3~4%が薬物や賭博、性行為などの犯罪に絡むものだったとされた。こうした状況は、2013年にVenmoの親会社のBrainTreeを8億ドル(約1230億円)で買収したペイパルにとって未知のことではない。

同社は、Venmoが不正行為に利用されていることを認識しており、年次報告書に「当社のプラットフォームが、違法な活動や不適切な取引に利用され続ける可能性がある」と記載し、その用途にマネーロンダリングやテロ資金の供与、違法賭博、薬物販売、児童ポルノ、人身売買などのさまざまな犯罪を列挙していた。ペイパルは、こうした活動を防止・検出するための対策に投資しているが、それらが完全に効果を発揮するわけではないとも述べている。

違法薬物の取引

違法薬物の取引においては現金が最も好まれるものの、多くのドラッグディーラーは、顧客が現金を持っていない場合でも販売を諦めない。例えば、ロサンゼルス在住で映画業界で働く37歳のチャーリー・フラックは、土曜の夜にコカインが欲しいときに売人に電話をかけてVenmoで支払っている。
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編集=上田裕資

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