しかし、ペルシャ猫の圧倒的な人気の裏には、暗い物語が存在する。そしてその結果として、ペルシャという品種は2つの異なる系統に分断されているのだ。
1つは、トラディショナル(伝統的)と呼ばれるペルシャで、「ドールフェイス(人形のような顔の)・ペルシャ」とも呼ばれる。こちらの系統は、古代の先祖の面影を残すナチュラルな顔立ちで、体格はがっしりしており、毛並みの手入れにあまり手がかからない。
もう1つは、今日はるかに脚光を浴びる、モダン(現代的)・ペルシャだ。犬種のペキニーズのような完全にぺしゃんこの顔立ちという極端な特徴のおかげで、モダン・ペルシャは見ればすぐにそれとわかる(フラットフェイス、ピークフェイスなどとも呼ばれる)。丸い眼と、気品に満ちた流れるような長毛も特徴的だ。
どちらの系統も、ペルシャ特有の穏やかな気質で知られるが、ここ数十年にわたり、キャットショーでも、愛好家の間でも、スポットライトを独占しているのはモダン・ペルシャの方だ。
しかし、モダン・ペルシャの台頭には負の側面がある。動物の健康や福祉を犠牲にした「選択交配による美的基準の追求」はどこまで許されるのか、という問題を提起している。
モダン・ペルシャは、古代ペルシアとは無関係
ペルシャという品種名は、ペルシア(現代のイラン)の壮麗で豊かな歴史遺産を想起させる。しかし、「モダン・ペルシャ」は、実はペルシア帝国とは縁もゆかりもない。やや平たいが、さほど極端ではない顔立ちと、がっしりした体格を持つトラディショナル・ペルシャは、確かに古代ペルシアにさかのぼるルーツをもつ。これらの初期バージョンともいえるネコは、ナチュラルな美しさと、毛並みの手入れのしやすさから愛されてきた。