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2025.01.06 10:30

生成AIの普及で音楽制作者は「25%の減収」に、業界初の調査で

Getty Images

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人工知能(AI)の普及が音楽業界に及ぼす経済的影響に関する初の調査結果によると、音楽クリエイターは、生成AIによって莫大な損失を被ることになりそうだ。

パリに本拠を置く非営利の国際組織CISAC(著作権協会国際連合)の依頼で行われたこの調査によると、生成AIを用いた音楽とオーディオビジュアル・コンテンツの市場規模は、現状の30億ユーロ(約4840億円)から2028年には640億ユーロ(約10兆3000億円)に拡大する見通しという。

これはハイテク企業にとって朗報だが、音楽とオーディオビジュアル・コンテンツのクリエイターにとっては悪いニュースだ。今後5年間で、彼らの収入はそれぞれ24%と21%減少し、損失額は合計で220億ユーロ(約3兆5000億円)に達する見込みという。

「この調査結果は、クリエイターたちの作品が不公正かつ非倫理的に流用され、生成AI企業の収益を押し上げる一方、クリエイターへの報酬は減少するという、音楽業界が直面している根本的な欠陥を指摘している」とCISACのガディ・オロン事務局長は述べている。

報告書は、2028年までに生成AI音楽が従来の音楽ストリーミング・プラットフォームの収益の約20%、音楽ライブラリの収益の約60%を占めるようになると試算している。最も大きな打撃を受けるのは、吹き替えや字幕の翻訳者で、収入の56%が失われるリスクがある。脚本家や監督は、15〜20%の減収となる可能性がある。

CISACの副会長で映画監督のアンヘレス・ゴンサレス=シンデ・レイグは、「生成AIの活用と収益化を急ぐあまり、クリエイターは作品の利用を承認する権利を奪われ、透明性ルールに保護されず、公正な報酬を得られなくなるという懸念が生じている。私たちは、AIの世界に燃料を供給している人間のクリエイターたちを、この分野を規制する政策立案の中心に置かなければならない」と述べている。

CISACは、一部の国々は公正なルールを設けており、EUのAI法は重要な第一歩であると強調している。この法律は、AIのトレーニングのために著作権で保護された素材を使用する場合、権利者に許可を求めることをハイテク企業に義務付けている。

この報告書を発表したCISAC会長で元ABBAのバンドメンバーであるビョルン・ウルヴァエウスは、オーストラリアとニュージーランドがクリエイターの保護において世界をリードしていると指摘する。

早急な対応が求められる

「オーストラリアとニュージーランドは、クリエイターの権利を守りつつ、責任ある革新的な技術開発を促進するAI政策のゴールドスタンダードを設定することで、AIが人間の創造性を代替するのではなく、より高めるツールとして機能することを保証した」と彼は述べている。

米国では、著作権局が、AIトレーニングのためのクリエイティブコンテンツの利用を規制する方法についての提言を検討している。

「政策立案者たちは、人間のクリエイターや文化、創造性を守るために、急いで行動しなければならない。彼らは、人間のクリエイターが保護され、法的権利を行使でき、AIサービスに透明性を要求できるようにしなければならない」とオロンは指摘した。

「これらの原則が遵守されれば、AIは文化やクリエイティブ分野への脅威ではなくなり、クリエイターとテック業界はWin-Winな関係を構築することができる」と彼は語った。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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