デイシャー氏はこうも話す。
「無負極電池では、電解液(イオン性物質(電解質)を水などに溶解させた電気伝導性を持つ溶液)と集電体(箔を重ねて作られた、発電した電気を集める導電体)との接触が良好でなければなりません。液体電解質を使用する場合、液体は流動的であり、あらゆる場所に流れ、あらゆる表面を濡らすことができるため、一般的に両者の接触をよくするのは非常に簡単なんです。しかし、固体電解質では同じことはできません」
上記のようなメリットのある液体電解質であるが、一方で、液体電解質は、SEI被膜(=Solid Electrolyte Interphase:リチウムイオン電池(LIB)中の負極と電解液の界面に主に充電時に形成される被膜)と呼ばれる負の蓄積を引き起こし、バッテリーの効果を徐々に低下させていく──つまりは「バッテリーの劣化が早い」のである。研究チームはこれに対処するため、電解質を取り囲むように集電体を設計した。集電体の形成には、液体のように流動的なアルミニウム粉末を使用した。この粉末をバッテリー組み立て時に高圧で圧縮することで、電解液との間で液体のような接触を保つことのできる固体の集電体を生みだすことに成功したのである。
「ナトリウム固体電池は通常、ずっと先の未来で実現可能な技術だと思われていました。今回の論文で、ナトリウム電池が実際にうまく機能すること、場合によってはリチウム電池よりもうまく機能することを立証し、ナトリウム電池分野へのさらなる参入を促すことができればと思います」とデイシャー氏は語った。