妥当な給与額を現実的に把握している人もいるが、特に若い世代では経済的な成功について、Z世代のスラングで言うところの「delulu(妄想的)」な考えを抱いている人もいる。
金融サービスを提供する企業Empower(エンパワー)による最新調査で、若者が持つ「経済的成功に対する認識」と、「経済的な現実」との間に驚くべき乖離があることが明らかになった。この調査から、Z世代(おおむね、1997年度から2012年度に生まれた世代)の回答者は、「経済的成功」を得るためには、平均58万7797ドル(約9000万円)の年収と、947万ドル(約14億4800万円)の純資産が必要だと考えていることがわかった。
Z世代が給与に関してどんなに大きな妄想を抱いているかは、米国の実際の所得分布と比較するとよくわかる。SmartAsset(スマート・アセット)の調査によると、50万ドル(約7700万円)以上の年収があれば、50州中32州で、稼ぎ手の上位1%に入るという。これは、平均的なZ世代が抱く「成功の基準」が、非現実的なまでに高いことを示している。
このような「認識と現実の乖離」は、金融リテラシーとそうした達成不可能な目標を設定することがどういう影響を導き得るかについて、重要な問題を提起する。Z世代が社会に出ていくなかで、こうした高い期待と現実の経済との折り合いをつけることは、大きな課題になる可能性がある。キャリア選択、仕事の満足度、全体的な経済的ウェルビーイングに影響を及ぼすこともあり得る。
世代間ギャップ、ミレニアル世代は約2750万円が経済的成功の証
エンパワーによる最新の調査『Secret to Success(成功の秘訣)』では、米国人は平均すると、年収27万214ドル(約4130万円)を経済的達成の閾値と考えていることが明らかになった。この数字は、現在の世帯所得の中央値である8万610ドル(約1230万円)を大幅に上回っている。最も顕著な発見は、「給与への期待」に関して、年齢によるギャップが明確に存在したことだ。Z世代は、ミレニアル世代(1980年代から1990年代に生まれた世代)に比べて、野心的な経済指標を示している。ミレニアル世代は、プロフェッショナルとして経済的に成功する証として、約18万ドル(約2750万円)という比較的控えめな目標を設定した。
Z世代は、最高水準の経済的成功を設定するだけでなく、その目標を達成することにも最大の自信を示している。Z世代回答者の71%が、「自分は一生のうちに経済的な成功を収められる」という楽観的な考えを示した。この割合は、同じように感じているミレニアル世代の70%をわずかに上回っている。一方で、X世代(1965年から1970年代に生まれた世代)では、同レベルの自信を持つ人は53%、ベビーブーマー世代(1946年から1964年に生まれた世代)では45%に過ぎなかった。