テクノロジー

2024.12.15 15:15

45億年前の隕石から「レゴブロック」3Dプリント、 月面での建築シミュレートに

WonderfulEngineeringより

本稿は英国のテクノロジー特化メディア「Wonderfulengineering」による2024年7月6日の記事を翻訳したものである。


月を探査する目的のひとつは、何と言っても、近い将来、月面で採取できる材料を用いて長期間使用可能な基地を建設できるようにすることだろう。そして今回、それに関して新たな方法を試すため、欧州宇宙機関(ESA)の専門家らによって、太古の宇宙物質を用いたレゴブロックが3Dプリントされた。今回の試行は月面基地建設の布石になるかもしれない。

月の表面を覆っているのは「レゴリス」という岩石土壌の一種で、太陽放射や隕石の衝突によって何十億年もかけて作られた物質だという。レゴリスは地球上には存在しない物質ではあるが、ESAの研究者たちは、模造品を作ることに成功し、生成した模造レゴリスをさらに、生分解性ポリマーであるポリ乳酸と組み合わせた。

研究グループはこの模造レゴリスをさらに本物へと近づけるために、3つ目の要素として隕石ダストを加えた。具体的に述べれば、模造レゴリスを本物のレゴリスに近づけるために2000年に北アフリカに落下した45億年前の隕石を粉砕し、模造レゴリスに加えたのである。そして、最終的に模造レゴリスは、泰然とした宇宙を思わせる灰色のレンガやレゴブロックのような見た目に落ち着いた。完璧ではなかったものの、本来月面にしかないレゴリスが3Dプリント技術によって地球上で創り出されたことは大きな進歩だといえるだろう。

「当たり前ですが、今まで誰も模造レゴリス、言うなれば『スペースブロック』を使って月面で建造物を建てたことなどはありません。あらゆる設計技術や建築技術を地球上で試せるといった『柔軟性』の観点で、模造レゴリス・スペースブロックは素晴らしいと思います。われわれ研究チームは楽しみながら、人類の技術が月面においてどの程度本領を発揮できるのか科学的に試せましたし、理解できました」とESAサイエンスオフィサーのエイダン・カウリーは語る。

さらにカウリーは、このプロジェクトを担当したチームの情熱を次のように語った。

「チームメンバーは想像力をつかう建築が大好きな人たちで、宇宙塵(宇宙空間に分布する1mm以下の固体の粒子)をレゴブロックのようなレンガにできないかと考えたんです。結果は素晴らしいもので、今回のレンガは少し粗っぽく見えるかもしれませんが、重要なのは、想像力を駆使し、その仮定を実行に移す力がまだ活発であるということです。そのおかげで様々な建築技術を試すことができています」

このプロジェクトは、月にある材料を使ってインターロッキング構造(「インターロック」は「かみ合わせる」という意味。ギザギザにカットされたコンクリートブロックをインターロックして、その間に砂を埋め込み、敷き詰める施工スタイルのこと)が可能だと立証することになった。今回の成功は、月に基地を作れる可能性を十分高めた。

また、3Dプリントされたこのスペースブロックは、科学や工学の分野でキャリアを積む若者たちが更なる学びを得るために今後も利用されることとなる(ちなみにこのスペースブロックは2024年9月20日まで、アメリカ、カナダ、ヨーロッパ、オーストラリアのレゴストアで展示されていた)。

「現在を生きる科学者やエンジニアは、たとえレゴブロックを用いて何か試すとしても、周知の事実を確認することにしか用いることはありません。その点、ESAのスペースブロックは若い世代にとって良い刺激となり、学びの楽しさを再認識させる素晴らしいものです。なによりも、スペースブロックを生みだした想像力は、今後も宇宙科学において重要な役割を担っていくことでしょう」

ESAのブランド、パートナーシップ・オフィスの責任者であるエメット・フレッチャー氏はこう締めくくった。



参考>> 同ニュースに関するレゴ社HP上の発表

翻訳=大石月子 編集=石井節子

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