ここでの「会うべき」は義務というよりも、会わない選択をすると後悔する、というニュアンスをぼくは感じます。この記事では、「会うべき人」について考えてみます。
これを考えようと思ったのは、11月のある日、ミラノの刑務所で開催されたアート展を見てからです。ミラノ工科大学デザイン学部が主体として活動しているオフキャンパスという仕組みがあります。ミラノ市内の数カ所に設置されたキャンパスでは、研究成果を市民や地域のために活用し、さらに研究内容を充実させていく取り組みをしています。その一つがサンヴィットレ刑務所です。
![サンヴィットレ刑務所の一角](https://images.forbesjapan.com/media/article/75827/images/editor/f9b1a009386ec21e73b8fa26cccf35f65b38ec16.jpg?w=1200)
ここにあるオフキャンパスが都市と刑務所の関係を探っています。その一環として、この3月から6月までコンテンポラリーアーティストのリードのもと収監者やリサーチャーなどが対等にワークショップを実施しました。そこでつくられた作品が、今回の展覧会で外部の人間にも公開されました。
![展示された作品の前に立つ、ワークショップをキュレートしたパリ生まれのアーティスト、モリス・ピフラさん](https://images.forbesjapan.com/media/article/75827/images/editor/73e14051a76f409ddb00b135cd97788f2e44808d.jpg?w=1200)
ふたつ目は、判決前であるため収監者が流動的で、かつ収監者はイタリア人以外が7割程度であるという点です。アフリカや中東からの人が圧倒的に多い。家族を故郷に残したまま地中海を小さなボートで渡り、誰かの遭難を見届けながら辿り着いたイタリア半島では身分証明書もなく、イタリア語も話せないから、仕事もできず、住居もない。結果、何らかの罪を犯してしまって収監されているというわけです。
したがって4カ月間にわたるワークショップに参加する人は毎回違うことが多く、また、ある程度のコミュニケーションが可能な人たちが選ばれます。
![リサーチャーも収監者と同じ立場でワークショップに参加](https://images.forbesjapan.com/media/article/75827/images/editor/eb3366b6af2dcc1e18dd52fac9cfea68daeb2c58.jpg?w=1200)