2024年4月、働き方改革関連法施行により、トラックドライバーの時間外労働に関する上限規制が適用された。これを受けて運送量の低下はもちろん、運送・物流業者やトラックドライバーの売り上げ・収入の減少、また担い手不足といった「2024年問題」が声高に叫ばれ、大きな注目を集めた。ECやフリマアプリといったCtoCサービスが普及し、物流規模は増加の一途をたどっている。物流センターでは自動ピッキングシステムや無人搬送ロボットの導入・稼働が進んでいるが、いまだに効率化が進んでいない領域があるとリードテックの代表取締役・前田春紀(写真。以下、前田)は話す。
「小口の荷物については、AGV(無人搬送車)や自動走行の技術、eコマースによるネットワークの構築、また近年では物流業務を代行する3PL(サードパーティ・ロジスティクス)が情報を一元化することで、無人化・自動化が進み、効率的な搬送が可能となりました。一方で、大型の荷物はパレット(荷役台)に載せてフォークリフトで運搬する必要があり、効率的な運用はフォークマンの技術や裁量に大きく依存しているのが現状です。その結果、フォークマンの労働負荷が増大し、いずれ限界を迎えるのは明らかです」
業務用の大ロット発注や資材の搬送にフォークリフトは欠かせない。倉庫や物流センターの平面面積が限られるなか、貨物を複数段積みして容積でカバーするなど、各フォークマンの技術や知見によって運用されている現場は多い。そうした課題に対してリードテックは、AGF(無人搬送フォークリフト)適用範囲の最大化や建屋への搬送システム組み込みによってフォークマンと事業所の生産性向上を果たすソリューションを提供している。
AGFが今まさに直面している物流現場の課題を解決する
リードテックは、大手ゼネコンの清水建設、建設機械レンタル事業を展開するレンタルのニッケン、リース・ファイナンスサービスを提供する東京センチュリーによる3社の合弁会社として、23年に設立された。設立の背景には、建物への事業投資を検討する事業者から構内搬送の効率化に関する相談が多く寄せられたことだと、当時、清水建設で営業を担当していた前田が説明する。「構内搬送の効率化を根本的に解決するためには、建物の企画段階から構内搬送システムに焦点を合わせ、ビルトインするかたちで新築するのがベストと言えます。すでに生産・加工工場では、設備やラインに関連したシステムをビルトインした新築建屋の検討が始まっています。清水建設でも物流の現場調査を進めるなかで、先ほど挙げた現場での課題を認識していたため、省人化ロボットの建設現場展開といった研究を進めるなど、そのソリューションの準備もできていました。
しかし、事業者からは『将来的にではなく、今まさに直面している問題をどうにかしてほしい』といった声も大きかったのです。そこで、まずは構内搬送の効率化に特化したAGFとその運用システムを、誰でも安心して使えるかたちで提供することにしました。特にAGFについては、長期間にわたる保守メンテナンスや月次レンタルを希望される事業者様も多かったので、レンタルのニッケンと東京センチュリーと協働することにしたのです」
リードテックは、無人フォークリフトで世界最高峰の実績をもつビジョンナビロボティクスのAGFを採用し、自社開発のタブレット型操作端末「ユニバーサルUI」を直感的に操作することで搬送指示を出せるシステムを構築。システム導入の際には担当者が現場へと赴き、そこで働くフォークマンにヒアリングを行ったうえで、既存設備との連携や実運用の調整を行っている。
フォークマンへのヒアリングを行う理由について、前田は「パレットでの荷役に求められるのは速さと正確さであり、その点で機械は人であるフォークマンに勝てない」と強調する。
「パレットの積み上げには、丸くロールされた弾力性の強い素材や二段積みを前提とした貨物、加工前の膨大な農作物など、多種多様な貨物を扱います。事業所ごとに異なった荷役ルールが設けられていることも多く、状況に応じて最適な荷役は変わってくるため、複雑な作業は人間のフォークマンを頼らざるをえない。そこで構内搬送システムに現場フォークマンの目線を取り入れながら、簡単な荷役はAGFに任せられるようにして、フォークマンが高度な作業に専念できるようにしました」
リードテックの提供する構内搬送システムは、ハードウェア/ソフトウェア両者のカスタマイズ性が高いところに強みがあるという。
ハードウェア面では、清水建設が培ってきた建設現場で稼働するロボットの開発および運用実績等を援用しながら、ビジョンナビロボティクスと協力してカスタマイズできる環境を整備。また、AGF運用にあたって重要となる長期の保守体制も万全だ。
ソフトウェアについても、「ユニバーサルUI」をベースに既存の在庫管理システムとの連携手法を確立しているため、現場の意見を取り入れたうえで運用可能なシステムを提供している。
「ユニバーサルUI」は、“猫の手を借りたいほど忙しい現場で猫でも使えるほど簡単なシステム”がコンセプトだ。TikTokで展開されている猫とフォークマンが協力して荷役を行うプロモーションムービーからも、人間の仕事を奪うのではなく、人間をサポートすることでより良い未来を目指す、という同社の自動化に込めた強い思いが伝わってくる。
フォークマンと共に目指す次世代インフラのかたち
「ここ数年、首都圏では外環道・圏央道が整備され、東海・関西・中国・北九州など、物流拠点の分散化が進んでいます。労働人口が減少する2030年問題を受けて、現状のままではフォークマンの労働負荷は増大する一方で、今の搬送システムでは物流コストが上昇し、結果として生活必需品の値段にも反映されてきてしまうはずです。こうした課題を解決するためにも大型貨物の搬送システム改善は急務であり、搬送システムについて情報収集から導入・検討のステージへと移る企業も増えてきました。当社では、フォークマンの知見を取り入れた最適な搬送システムを提案すると同時に、投資効果や将来的な費用対効果についての議論を通じて、顧客にとっての価値を明確にしています。
私たちの最終的なゴールは、AGF稼働を前提に、建屋にビルトインされたフレキシビリティのある搬送システムを構築することです。その推進によって、構内搬送の次世代インフラとして、物流の効率化になくてはならない存在になりたいと考えています」(前田)
物流網が発達し利便性が増すなかで、フォークマンをめぐる課題はこれまで日が当たってこなかった。フォークマンの労働環境の改善とともに、人間とロボットが手を取り合って問題解決を目指す未来のかたちが今まさに描かれようとしている。
リードテック
https://uni-leadtech.jp/
まえだ・はるき◎リードテック代表取締役。清水建設に入社後、国内外の建設現場での勤務を経て、大型現場の作業所長、部署長を歴任。2023年6月より現職。